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- 22章 -
- 不調和 -
しおりを挟む「じゃぁ、これは?」
「…………」
「どう思う?」
「………気でもふれたか」
全力でドン引きした顔でそう返した鈴橋の頬には市ノ瀬の手が添えられていた。あまりの事に固まったままの鈴橋からは、は?なに?気持ち悪いんだけど?と次々に心に刺さる言葉が投げ掛けられる。
『…なにもそこまで言わなくても良くね?』
とはいえ冷静に考えたら、同性の同級生にいきなり頬に手を添え見詰められたら…確かに気持ち悪いには同意しかない。
「…まぁ、それもそうだっー」
そうだろうな、と言いかけた言葉は、盛大なビンタをされたような音で喋りきることは出来なかった。
「いっ…てぇっ」
「ちょっとっ!!なにしてんの2人ともっ!?」
「…なんで居んだよ」
「今そんなことどーでも良いからっ!!」
突如叩かれた手には結構な痛みの余韻が残っている。そしてその余韻の原因であるのは、部活中でもあるのに何故か登場した植野だった。
暫し遅れて今の状況を理解した鈴橋は若干気まずそうな表情を浮かべながら、ストップマークよろしく手のひらを植野へと差し向ける。
「あー…なんでもないから」
「今の状況でなんでもないことあるっ!?」
「ないっつってんだろっ、なに考えてんだっ!!ってか何かあってたまるかよっ!」
「なんだってっ!?」
「あってほしいのかよ!学みたいな返しすんなっ」
「えっ!!(*゚Д゚*)」
「こんな馬鹿と一緒にするな」
「ばっ…!?」
「自覚ねぇのかよやべぇな」
「………」
いきなり現れいきなり怒りだした植野に困惑しか生まれず、絶対赤くなってるだろう腕を擦りながらなにやら泣きそうな顔で鈴橋と会話をしている植野を恨めしげに見上げた。
『昨日といい今日といい…なんでこんな怒ってんだよ、こいつ』
意味が分からないが一先ずこの状況で話の続きをする事が難しいのは明確だ。2度も痛い目に合わされて文句の1つでも言いたいところだが、グッと堪えると植野にご退場頂くため口を開く。
「いいからもう、夫婦漫才は。部活戻れよ」
「夫婦っ!?」
「植野っ!!」
夫婦と言われ照れたように両手を口許に当てた植野の名を叫んだ鈴橋は、ピンと立てた親指でジョギング中の部員達を指差した。
「ハウス」
「ハゥっ!? やっ、でもっ!!」
反論を口にする植野だったが無言でジッと見上げてくる鈴橋の視線から何かにを察したかのようで大人しく1歩下がった。
「分かった。じゃぁーまたね!」
「おー」
ガラッと態度を変え遅れた分を取り戻すがごとく嵐のように去って行った後ろ姿を呆気に取られながら見送る。
『んだよ一体…まぁ良いか。で、なんの話をしてたんだっけ…えっと…』
「あぁ、そう。逆だったらどう思うかなって」
「主語話せ主語」
「あー、だから、なんつーの?馬鹿みたいにスキンシップ多い奴が急にしなくなった、みたいな」
「安積の事か?」
「別に安積の事とは言ってねぇけど…」
と言いつつ、言っているのは安積の事だ。
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