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- 22章 -
- 不調和 -
しおりを挟む自分が去った後どんな話がされたのか。落ち着かないまま班乃が戻ってくるのを待っていた市ノ瀬だったが、3限目どころか4限目ギリギリに戻ってきた為話すことが出来ないまま昼休憩に入った。
礼が終わると同時に立ち上がり、逸る気持ちのまま班乃の元へと向かおうとしたその時ー
「急に居なくなったからどーしたかと思った!大丈夫か??」
「大丈夫っ!!多分貧血??飯食ったら完全復活するとおもっ!」
「そんなあっけらかんとw ったく心配かけさせんなよなっ!とりま無理はすんなよ?」
「うんっ!心配かけてごめんっ!ありがとっ!!」
クラスメイトと明るく会話を交わしながら安積が教室へと足を踏み入れた。一先ず元気そうな姿に一安心ではあるのだが…
目があった瞬間、満面の笑みで近づいてくる。
「睦月っ!!行こっ!昼飯っ!!」
通りすがりにテンション高く良い放つと、自分の鞄から昼食を取り出し流れるように班乃へと向かう。
「あっきーも行くよっ!早く!腹減った!!あっ、でも飲み物買ってから行くから先屋上行ってて!」
そのまま班乃をも通りすぎ、教室を出ていった。
『いやいやいや、おかしいだろそのテンション…』
先程とは打って変わった態度に困惑しか勝たない。班乃すら言葉を発することなく安積の出ていった方を呆気にとられたように眺めていた。
「なぁ」
「えっ、あぁ、なんです?」
「なにがあった?」
「えっと…わかりません」
「お前と話してあーなったんだろ?」
「…どう、なんでしょ?」
直前まで話していた班乃ですら分かりかねているようだ。それなら、自分はもっと分からない。
「なぁ」
「はい」
「どんな話したんだ?」
「………」
その問いに応えることなく市ノ瀬へと視線を向け、言葉を探すかのように眉間に微かなシワを刻み目を伏せた。
「信じてくれなくても良いです」
そう前置きをしながら屋上に向かうために歩きだし、市ノ瀬もそれに続く。
「傷つけたくないのは、僕も同じでした。でも僕にそれだけの力がなかった。僕の行動や言動で辛い想いをさせたのは本当に申し訳ないと思ってます。そして今も、傷つけたくないと思う気持ちは変わりません」
通りすがる学生たちは2人の会話なんてまるで気にしていないと言うように通りすぎていく。自分達がいくら悩んでいたってそんなもんだ。
誰もが自分の手の届く範囲で精一杯なのかもしれない。だからこそ、手の届く大切な人のために全力を尽くすのかもしれない。
今自分は、安積のためにどれだけのことが出来るんだろう。
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