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- 22章 -
- 哀 -
しおりを挟む責める気持ちは分からないわけではない。でも、そんなの全部結果が出てからしか分からないものだ。そんなことを言い出してしまったら、なにも出来なくなってしまう。
「明も、楓さんもっ!事故に遭う為にそうしたんじゃないっ!事故に遭うって分かっててそうしたんでもない!運転手を擁護する事はできないけど、その人だって事故を起こすために運転してたんじゃないでしょ!?誰だって事故が起きるなんて分からなかったんだからっ…明のせいじゃ絶対ないよっ」
運が、悪かったとしか言いようがないのだ。後数分ずれていたら、後数歩ずれていたら、事故に遭っていたのは他の誰かだったのかもしれないのだ。
そんなもしもなんて考えても、キリがない。
「そう、かもしれませんね」
「明……」
賛同しきらない返答が、自分を許せていないのを表していて。頭では分かっていたとしても後悔がなくなるわけでもないし、もしもを考えることを止められないのだろう。
分かってる、そんなすぐに整理が出来ることなわけない。
『お姉さんの容態だって、まだ安心できない状況なんだし……』
どんな慰めの言葉も、どんな応援の言葉も、今はどれも相応しい気がしない。
置いた手だけが自分に出来る全てな気がして、不甲斐なくなさに情けなくなる。
「どうして、こうも、こんな短期間で、僕の周りでばかり、こんなことが起こるのでしょう…?どうして、僕の大切な人達ばかりが、こんな目に遭ってしまうのでしょうか?どうして、僕の手からは、いつも溢れていってしまうんでしょう?どうして、皆居なくなってしまうんでしょう?」
そんな悲痛な言葉には凡そそぐわない、表情のない顔で淡々と話し続ける。このまま全てを理性で押し込め内に溜め込み続けてしまっていては、心が壊れてしまう。
「……あのさっ、色々あって疲れたでしょ?少し、休もうよ。お姉さんだって元気に目を覚ますかもしれないし、悪い方向にばっか考えてると明にとっても良くないよ」
「………」
静かに瞬きを繰り返すだけの班乃の手から中身の冷め始めているカップを取ると、手を引き立ち上がらせそのままベッドへと連れていく。
「少しだけ寝て、頭も休ませてあげよ?大丈夫、俺はどこにも行かない。側に居るから」
きっと今は頭も体もいっぱいいっぱいなはずだ。なにが正解か分からないけれど誰かを失う事に怯えているのなら側に居ると言葉にするだけでも少しは安らいでもらえるかも知れない。
けれどそれだけじゃ足りない気がして、ベッドに腰掛け力なく置かれた班乃の両手を握り俯いた頭におでこを乗せた。
「だから、ゆっくりお休み。あっきー」
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