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- 21章 -
- 冒険 -
しおりを挟む「……………え?」
「あっ……ちっ、違う!今のは違うっ!!」
意図せず自然と出てしまった言葉に慌てて両手を振り否定をすると卓上に両手をつけて俯いた。
なんてことだ!
なんてことだっ!!
伝えたいことはたくさんあって、その為にたくさんシュミレーションして、実際に会話をして成り立ったものが正解だとは思ったけれど、これはあんまりだ。
全部すっ飛ばして結論を言ってしまったようなものじゃないか。
チラリと盗み見た植野は、訳が分からないというような表情をしていた。
当たり前だ。
けれど
でも
話す順番はシュミレーションとは大幅に違ったものの
好きだと言ったことは……
「………違うの?」
「…いや、違くない。違くは、ないな」
言ってしまったものはしょうがない。
机に置いた両手を祈るようにぎゅっと結び顔を上げると真っ直ぐと植野をその目に捉えた。
「ずっと、待たせて悪かった。しんどい思い、たくさんさせたと思う。気持ちに答えられないって言ったのに、変わらずに接してくれて感謝してる。そのおかげでしっかりと自分の気持ちと向き合うことが出来た。本当にありがとう」
「…………」
口を引き結んだまま花束を抱え次の言葉を待つその顔は不安げに揺れていた。自分の一挙一動で植野の表情はコロコロと変わる。そして、こんな顔をさせられるのは、たぶん……自分だけなのではないだろうか。
「ずっと考えてた。お前が作ってくれた時間、ずっとずっと。ちゃんと考えてたよ。お前があまりにも優しくしてくれるからこのままでも良いかもって、少し思ったりもしたけど…お前に辛いこと悲しいこと全部押し付けて与えてもらうだけの心地いい今に甘え続けるのは駄目なんだって。だから、変わらなきゃって思った。今を壊してしまったとしても、ちゃんと伝えなきゃって」
不安げにしながらも視線を反らすことなくしっかりと自分を見つめる植野その表情がどう変わってしまうのかは分からない。
次の言葉で、今の関係は終わってしまう。
望まない関係と成り変わってしまうかもしれない。
少しばかり手放したくない衝動に駆られるが、それでも、もう迷うことはなかった。
反らされる事のない視線に自らもしっかりと返し、背筋を伸ばして大きく息を吸い込み、そしてーー
「もし、お前があの時と同じように俺を想ってくれてるのなら、俺はそれに応えたい。
長い間、待たせて本当にごめん。
……俺も、お前が好きだ。
俺と…付き合ってほしい」
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