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- 21章 -
- 冒険 -
しおりを挟む「あれっ……」
部活の出し物の場所へと向かうと既にシートやパラソル、椅子などは畳まれていて、後はそれらを部室へ戻し纏められたゴミを捨てに行くだけで終わりという状態だった。
「あっ!学!お疲れ様!!」
「お疲れ様です、部長。もかして全部部長が片付けて下さったんですか?」
「うん!だってさ、見てよこれっ!」
嬉しそうに笑った冴霧は額にうっすらと浮かぶ汗を拭いながら、先程まで自分達が使っていたスペースに手を向けた。
「完売だよっ!文化祭が終わる前に全部っ!」
「完売っ!?本当ですか!?」
「本当本当っ!!凄いよねっ!まさか完売するとは思わなかったからすっげぇ嬉しい!」
「俺も、全部は無理だろうなって思ってました…凄いですね!!嬉しいですっ!」
同じように喜びを示し完売したブースから冴霧へと視線を移すと、お腹の前で両手を組みなにもなくなったブースを眺める笑顔になんとなく陰りが見えた気がした。
「部長?」
「あぁ、いや。良かったなぁ、って思って」
声のトーンを落とししみじみと言う声には笑顔と同じく陰りが見え、どこか悲しそうだった。
「栽培部ってさ、人数ギリギリなのに学以外殆ど幽霊部員じゃん?3年に上がった時にさ、ギリ規定人数が揃ったのにはほっとしたけど、皆やる気なかったから正直不安だったんだよ」
「…世話する範囲も広いですしね」
「そうそう。誰か1人でも辞めたら廃部だし、世話しきれなくても廃部だしね…。でもさ、学が頑張ってくれたからなんとかここまで続けられたし、文化祭もこうやって大成功出来た。本当に感謝してる。最後に良い思い出が出来てすっごく嬉しい。ありがとーね」
「……そんな、俺は別に……俺の方こそ、色々教えてもらって感謝してますし、楽しそうにしてる部長と一緒に活動するの、凄く楽しかったです」
「そっか…。そう言ってもらえただけで、頑張った甲斐があったよ。本当はもっとちゃんとした状態で部活引き継いであげたかったんだけど…ごめんね」
「いえっ、そんなっ!俺がここまでやってこれたのだって部長のおかげですからっ。少し不安はありますが…部長が残してくれた栽培部、存続させられるように頑張りますっ。だから、卒業してもまた遊びに来てくださいっ」
「うん、ありがとっ…絶対来るよっ!」
秋の終わりの涼しい風が吹きぬける中、もう1度何もなくなったブースを2人で眺めた。事実2人で準備を進めていた事もあり中々に大変だったからこそ達成感もひとしおあるけれど、だからこそ、終わってしまった寂しさも増してしまっている気がする。
周りの賑やかさが合間って、色を増した寂しさが心の中に落っこちる。もしかしたら気がつかないだけで、辺りにあふれる笑顔の下にも哀しみや寂しさが隠れてるのかもしれない。
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