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- 20章 -
- 開演 -
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そっとロミオの側へ座り込み、恐る恐る手を伸ばし息をしていないことを確認すると、みるみるとその表情が絶望へと染まっていく。自身を抱き締めるようにしてその場にうずくまった。
「なぜ!?なぜなの!?どうしてこんなっ!!?私は生きているのに!!どうしてっ、どうしてっ!?」
その悲痛な叫びは会場全体を飲み込み、誰1人として喋ることなくその行く末を見守った。
ロミオの手に握られていた小瓶を見つけたジュリエットは震える指先でそっと掴みあげ、光にかざすとそれは残酷なまでに綺麗に輝く。
「あぁ、貴方はこの毒を飲み死んでしまわれたのですね」
震える手で小瓶を口元へと引き寄せると優しい口づけを落とし、天を仰いだ。
けれど…
「でも、なんて酷い人……どうして私の分を残しておいてくれないのですか?」
流れる涙はそのままに、眠るように生き耐えたロミオの顔を優しく持ち上げ、頬を寄せた。
「まだ……暖かい」
宝物を扱うかのように丁寧に顔を降ろし、ロミオの腰に下げられている短剣を手に取る。光の反射で輝く短剣を穏やかな表情で眺め、最後にもう一度、決して抱き締め返してくれることのないロミオを抱き締める。
「こんなにも燃え上がり、消えることのない私達の想いがあるのです。きっとすぐ、再び巡り会えるでしょう。だから待っていて、この短剣で、私も、貴方のお側に」
短剣を自身へと向け、刺すと同時に全ての照明が落とされた。
「キャプレット、モンタギュー。
これは、お前達の憎しみが招いた罰だ」
領主の言葉と同時に照らしだされた舞台上には全てのキャストが勢揃いしており、中央には綺麗に着飾り静かに寝かされたロミオとジュリエットが、2人並ぶように安置されていた。
「純粋な2人の愛が、死と言う形で報われてしまった。そして、それは私の罪でもある。長きにわたる不和を、見て見ぬふりをしてしまっていたのだから」
中央に寝かされた2人を囲み、各々が項垂れたように頭を下げている。
「罰を受けたのだ。ここに居る、全ての者達が………」
胸に手を当て目をつぶり、静かに黙祷を捧げる領主に続き、全ての人が、同じように黙祷を捧げた。
そして、ゆっくりと、ゆっくりと全ての照明が落とされた。
「悲しみに包まれた和解の朝。太陽さえも、悲しみに顔を隠した朝。こうして、2人の物語は幕を閉じたのであった」
ナレーションの言葉と共に、静かにゆっくりと幕が下がっていく。
これで演劇は終わりだが、最後の挨拶が残っている。
急いで邪魔になるセットを片づけ、2列にならび直した。
「なぜ!?なぜなの!?どうしてこんなっ!!?私は生きているのに!!どうしてっ、どうしてっ!?」
その悲痛な叫びは会場全体を飲み込み、誰1人として喋ることなくその行く末を見守った。
ロミオの手に握られていた小瓶を見つけたジュリエットは震える指先でそっと掴みあげ、光にかざすとそれは残酷なまでに綺麗に輝く。
「あぁ、貴方はこの毒を飲み死んでしまわれたのですね」
震える手で小瓶を口元へと引き寄せると優しい口づけを落とし、天を仰いだ。
けれど…
「でも、なんて酷い人……どうして私の分を残しておいてくれないのですか?」
流れる涙はそのままに、眠るように生き耐えたロミオの顔を優しく持ち上げ、頬を寄せた。
「まだ……暖かい」
宝物を扱うかのように丁寧に顔を降ろし、ロミオの腰に下げられている短剣を手に取る。光の反射で輝く短剣を穏やかな表情で眺め、最後にもう一度、決して抱き締め返してくれることのないロミオを抱き締める。
「こんなにも燃え上がり、消えることのない私達の想いがあるのです。きっとすぐ、再び巡り会えるでしょう。だから待っていて、この短剣で、私も、貴方のお側に」
短剣を自身へと向け、刺すと同時に全ての照明が落とされた。
「キャプレット、モンタギュー。
これは、お前達の憎しみが招いた罰だ」
領主の言葉と同時に照らしだされた舞台上には全てのキャストが勢揃いしており、中央には綺麗に着飾り静かに寝かされたロミオとジュリエットが、2人並ぶように安置されていた。
「純粋な2人の愛が、死と言う形で報われてしまった。そして、それは私の罪でもある。長きにわたる不和を、見て見ぬふりをしてしまっていたのだから」
中央に寝かされた2人を囲み、各々が項垂れたように頭を下げている。
「罰を受けたのだ。ここに居る、全ての者達が………」
胸に手を当て目をつぶり、静かに黙祷を捧げる領主に続き、全ての人が、同じように黙祷を捧げた。
そして、ゆっくりと、ゆっくりと全ての照明が落とされた。
「悲しみに包まれた和解の朝。太陽さえも、悲しみに顔を隠した朝。こうして、2人の物語は幕を閉じたのであった」
ナレーションの言葉と共に、静かにゆっくりと幕が下がっていく。
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