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慰弦

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- 20章 -

- 開演 -

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ロミオが追放となり、両親、そして今まで見方で居てくれた乳母までもがパリス伯爵との婚儀をジュリエットへと進めてくる。

断固として拒否した末、父から婚儀か勘当かを迫られ困り果てたジュリエットは、ロレンス神父の元へ助けを求めに走った。

パリスとの婚儀を避けられるのなら、墓で死人と暮らすこととなっても構わないと言うジュリエットの強い意思に、神父は1つの小瓶を差し出す。


「これを飲めばたちまち薬が全身をまわり、冷たい眠気が襲う。脈さえも止まり死人と同じになる。けれど、それは偽りの死です。42時間もすれば心地よい睡眠から覚めたように目覚めるでしょう」


不安げに揺れるジュリエットの瞳を、その瞳の中の決意の程を推し量るように真っ直ぐに捉え、神父は言葉を紡ぎ続ける。


「その間にロミオへと使いを出しましょう。ロミオと共に目覚めを待ち、貴女が目を覚ました後、すぐにマンチュアへと連れ去りましょう」


絶望に浸っていたジュリエット目からは不安さえも消え去り、希望の光を宿すと怪しげに光る小瓶を大切そうに抱き締め立ち上がった。


「私に恐れや躊躇いなどありませんっ!ロミオと共に生きられるのなら、この命、いっとき死神へと預けましょう!!」


感謝の言葉を残し協会を飛び出したジュリエットは、企みがばれぬよう気丈にパリス伯爵との婚儀を快諾したかのように振る舞い、そしてその夜、静まり返った寝室で小瓶に未来を託し1人薬を飲み干したのであった。



一方その頃、使用人であるバルタザーからジュリエットの死を聞いたロミオは、急ぎジュリエットの元へと向かう。

その道中、ロレンス神父の使いとすれ違ったことも気がつかずに。

これが

ロミオとジュリエットの最大の悲劇の始まりである。


この辺りのナレーションが多いのは、40分で纏めあげなければならないため仕方がないだろう。

『あとちょっと、あとちょっとで終わる!油断せずにいこうっ!!』

舞台袖でクライマックスへ向けて気合いを入れ直している市ノ瀬が見守る中、安積が照明が落とされた舞台上に設置された墓台へと登った。

『あとちょっと、あとちょっとで終わる!!油断せずにいこうっ!!』

と、奇しくも2人して同じ思いを浮かべているとも知らずに。
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