Pop Step

慰弦

文字の大きさ
上 下
449 / 1,142
- 20章 -

-文化祭っ!!-

しおりを挟む



「ねぇ、紗千、せっかくだし、紗千も好きな花使ってこれ作ってみないか?」


材料は文化祭で使ったあまりがあるから揃えなくても大丈夫だし、自分で作るという経験で感性や器用さ、技術といったことの成長に繋げることも大切だと思う。自分が教えて上げられる事ならなんでも経験させてあげたいという思いからの発言だ。


「こんな凄そうなの、紗千に作れるのかしら?」

「やろうとしなければ絶対に出来ないでしょ。一緒にやれば大丈夫だよ」

「それもそうね」

「作れるの!?紗千もこれ作れるの!?」

「うん、出来るよ。一緒にやろ」

「ほんとっ!?やったぁー!!作る!お兄ちゃんと一緒に作るっ!!」


兄の提案でテンションが上がり、母の手を握りピョンピョンと跳ねていたその時ー


「あれっ!? 紗千ちゃんとおばさんっ!?」


喧騒の中でも聞き間違える事は決してないだろうその声の主は、人混みをぬって鈴橋一家へと一直線に向かってきた。


「あっ!!あや兄だぁ!!」

「……お前、なに持ってんだ」

「あぁ、これ??」


その両手にはペアのくまのぬいぐるみが抱えられており、その後ろにはどうやら一緒に行動していたらしい人物が気まずそうななんとも言えない顔をしてたたずんでいた。


「クイズを答えて賞品を探せっ!!に挑戦して手に入れたペアなくまさんだよっ!!」

「あー、まぁ、おめでとう。なんか珍しいな。植野と市ノ瀬が一緒に居るなんて」

「いや、本当はせーちゃんも居た筈なんだけど、気がついたら居なかったんだよね。神隠しっ!」


本当は、“トイレ行ってくるからちょい待ち!!”という安積の声を植野が聞き逃し、その声に気がついていた市ノ瀬はそのうち追いついてくるだろうと放置していた結果合流できず今に至っていた。


「そんなことよりっ!」

「そんな事って…」

「こんにちはおばさん!!文化祭来れないって聞いてたんだけど、来れたんですね!!」

「こんにちは綾君。市ノ瀬君もこんにちは、お久しぶり」


元気良く挨拶をする植野とは対照的に、市ノ瀬は無言のままペコリと頭を下げる。そんな態度を特に気にするでもなく、鈴橋母はふふっ、と穏やかに笑い返した。


「そうなのよー。最初は仕事もあるし来られないと思ってたのだけど、去年も来られなかったし紗千もお兄ちゃんの文化祭行きたいって言うから、パパと話し合って午前中だけならってことでなんとか調整して貰えたの」

「そんなんですか!!良かったね、がっくん!!」

「そうだな。良い思い出になってくれるといいけど」


良かったねの言葉を、自身ではなく妹に向けた言葉だと疑いもせず受けとる辺り、究極のシスコンはどうも健在らしい。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた

翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」 そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。 チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

初恋はおしまい

佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。 高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。 ※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。 今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

私の事を調べないで!

さつき
BL
生徒会の副会長としての姿と 桜華の白龍としての姿をもつ 咲夜 バレないように過ごすが 転校生が来てから騒がしくなり みんなが私の事を調べだして… 表紙イラストは みそかさんの「みそかのメーカー2」で作成してお借りしています↓ https://picrew.me/image_maker/625951

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

BlueRose

雨衣
BL
学園の人気者が集まる生徒会 しかし、その会計である直紘は前髪が長くメガネをかけており、あまり目立つとは言えない容姿をしていた。 その直紘には色々なウワサがあり…? アンチ王道気味です。 加筆&修正しました。 話思いついたら追加します。

早く惚れてよ、怖がりナツ

ぱんなこった。
BL
幼少期のトラウマのせいで男性が怖くて苦手な男子高校生1年の那月(なつ)16歳。女友達はいるものの、男子と上手く話す事すらできず、ずっと周りに煙たがられていた。 このままではダメだと、高校でこそ克服しようと思いつつも何度も玉砕してしまう。 そしてある日、そんな那月をからかってきた同級生達に襲われそうになった時、偶然3年生の彩世(いろせ)がやってくる。 一見、真面目で大人しそうな彩世は、那月を助けてくれて… 那月は初めて、男子…それも先輩とまともに言葉を交わす。 ツンデレ溺愛先輩×男が怖い年下後輩 《表紙はフリーイラスト@oekakimikasuke様のものをお借りしました》

処理中です...