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- 20章 -
-文化祭っ!!-
しおりを挟む下駄箱横の陽当たりのよい場所に陣取っている園芸部スペース、パラソルで作った日陰の下で鈴橋はー
読書をしていた。
決して売る気がないわけでもやる気がないわけではなく、沢山の演し物を回る文化祭で鉢植えされた花を買うのは自ずと帰り際になるだろうし、実際視線を向けたり後で寄ろうと話しながら通る人達ばかりだったので開幕早々のこの時間は暇でしかなく…
しかしスペースを離れるわけにはいかないので、交代が来るまでは読書でもしていようと思い立ったのだった。
「いたぁーー!!!」
先程立ち寄ってくれた班乃と安積が差し入れてくれたジュースで喉を潤しながらひっそりと読書タイムを楽しんでいたその時、少し離れた場所から聞き馴染みのありすぎる声が飛んできて、弾かれたように顔を上げた。
「紗千っ!? と、母さん?? え?なんでここに?保育園は?」
声の主は妹である紗千であり、側には保育園の仕事で来られない筈の母の姿があった。兄を見つけた紗千は鈴橋目掛け走りよりその勢いのまま飛び付いた。なんなく受け止め抱き上げると、母に戸惑いと疑問を投げ掛けた。
「紗千がどうしてもお兄ちゃんの所行きたいって言うから、午前中だけならってお父さんがね」
「成る程…ありがとう」
「ねぇ!このお花達お兄ちゃんが作ったの?」
「うん。お兄ちゃんと、同じ部活の人達で育てたんだよ」
「凄いねー!いっぱいある!たくさん!綺麗!」
「ありがとう」
鈴橋の腕のなかで、綺麗に飾り付けられ並べられた花を目をキラキラさせて何度も何度も視線を行き来させた。
「でも、本当凄いのね。学校の部活でこんなにたくさん作るなんて」
「学園広いから、それなりに管理する花壇も多いし。それに部長の家が花屋なのもあるのかも」
「そうなの?凄いわね!それに、これ、なにかしら?」
母が指差したのは何週間もかけて地道に乾燥や着色などなど手間ひまかけて作ったハーバリウムだった。
「ハーバリウム。生花は使えないから、まずドライフラワーとかプリザードフラワーにしてから使うんだ。結構手間かかるからあまり数は作れなかったんだけど、うまく行けば1年はもつから生花育てる暇がない人に丁度良いと思って」
「へぇー、なるほど。今は良いものがあるのねぇ」
「お母さん!これ欲しい!!」
兄の腕から降りた紗千はハーバリウムの前でしゃがみこみ、赤と白のバラとダリアなどが浮かんでいるハーバリウムを手に取った。日の光を受けて特有のキラキラした光を放っている。
「良いわねこれ、凄く綺麗!お家に飾りましょう!学、これはいくらかしら?」
「え? あぁ、500円だけど…あー、まって」
お財布を取り出そうとした母を制して、妹の横にしゃがみこんだ。
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