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- 19章 -
- 決戦前夜 -
しおりを挟む「すげぇな……」
自分のクラスへと戻った鈴橋は、教室を見た第一声に思わず呟いた。
「あっ!がっくん!!部活の方は準備終わったの?」
「あぁ、こっちはもう準備万端。というか、凄いことになってんな教室」
「でしょ!?皆めっちゃ頑張ったからねっ!!」
窓側は一面、たこ焼き、お好み焼き、焼きそば、という縁日の出店のような暖簾がかけられ、鉄板もセットされていた。隣にある大きめのクーラーボックスには飲み物が入れられ、氷を入れるだけにっている。
教壇側にはビニールプールが2つ置いてあり、明日ヨーヨーとスーパーボールやちっちゃいオモチャを浮かべる予定らしい。
教室後ろ側には、机が数個合わせられ綺麗にテーブルクロスが引かれた物が計6つ用意されており、割り箸やティッシュがセットされ、黒板という黒板には様々なお面やわたあめを模した袋が所狭しと飾られていた。
「思ったよりもちゃんと縁日っぽくなってたんだな」
「でしょー!!」
大きく振り上げた手を教室へと向けた植野は、異様なほどに晴れやかな笑顔を浮かべている。
もちろん準備を頑張ったからという理由もあるのだろうが、なんだかそれだけではないような気がした…
「明日は今日までの練習成果存分に発揮するからっ!!今日までのたこ焼きとか焼きそばとかとか漬の日々の成果余すとこなく発揮するから!!漸く発揮出来るから!くっそ、そうめん食いてぇっ!!」
「…暫くソース的なものが食べたくない気持ちが感じ取れるよ。お疲れ、ソース」
「ありがとうっ!!」
植野が微かに涙の浮かぶ目で最後の仕上げだっ!と店前の暖簾をかけると、これでもう明日までやることはなくなった。
残っていた生徒も疲労を称えつつ、しかし明日の本番への楽しみも滲ませながら帰路へとつきはじめ植野達もそれに続く。
「がっくんは何時くらいに部活の方行くの?」
「10時から12時くらいかな」
「あっ、じゃぁさっ!昼御飯クラスに食べ来てよっ!俺13時までだから!」
「分かった。演劇部の発表は14時からだし、食ったら一緒に行くか」
「うんっ!ほんと時間被んなくて良かったよね!楽しみだなぁ、明日っ!」
「…そうだな。皆頑張ってたし成功すると良いな」
妹の迎えがある時は植野宅を1度通りすぎて行く事となるが、そうでない日は植野宅へと着く前に別れる事になる。
今日は迎えがない日であり文化祭の話に花を咲かせながら別れ道まで来ると、また明日と言い合い道を別れた。
こういう日、植野は曲がり角まで行くと決まって1度振り返り、満面の笑みで大きく手を振って口パクでバイバイと言う。
それに気がついてからは鈴橋も決まって植野が角を曲がるまでその場で動かず、手を振り返し幾分かの寂しさと共に見送るのだ。
そんな、いつもの風景。
鈴橋が満足し維持しようとしていた物のひとつだ。
それを、明日壊してしまうかもしれない。
だが、これは早かれ遅かれ、どんな答えであれ、ちゃんと自分が答えを出さなくては行けないことなのだ。
「冒険、するって決めたんだろ」
尻込みしてしまいそうな心を咎めるように呟いて、鈴橋も自宅へと足を進めた。
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