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慰弦

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- 19章 -

- 矛盾と決意 -

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「なにこれつけ汁が2個もある!!うまそー!」

「こっちは普通のめんつゆで、飽きたらニンニクとか生姜入れて味変していいし、もう一個はめんつゆに卵とすり胡麻、豆板醤と胡麻油入れた中華風だよー!最近はまってるんだよね~」

「うわぁ、めっちゃ精つきそう!!」

「お腹冷えたらにゅうめんにしても良いしね!」

「待って、それ以上止めて!色々食いたくなるから!とにかく、もう我慢できなーい!」

「グゥーレイトォー!」

「「いただきまーすっ!」」


阿吽の呼吸で某フレーク食品のCMネタを飛ばしあうと声を揃えて食事の挨拶を口にし、半分ほどになるまで黙々と箸を動かし続ける。

味を変えつつ食べると飽きが来ずどんどん吸収されていってしまい、喉の乾きを潤し一息ついたところで最近気になっていたことを投げ掛けてみることにした。


「ねぇひじり、最近仕事順調なの?」

「ん??なぁにいきなり?至って順調だよ?」

「やっぱりかっ!だから最近学校来ないんだねぇ…順調なのは凄く嬉しいけど、ちょっと寂しいなぁーって」

「え? あっ、あぁ、そういうこと。ごめんね寂しがらせて。でもね、近頃学校行かないのは順調だからってわけじゃないんだよ」

「そうなん? じゃぁーなんで?」


以前兄から学校に来るのは仕事に行き詰まった時と聞いたことがあったので、最近来ないのは仕事が順調だからなのかと思ったけれどどうやら違うらしい。

不思議そうな弟の視線を受けながら月影は1度天井を仰いだあと、おでこに両手を当てて限界まで息を吸い込んだかと思うとこの世の終わりのようなため息をついた。


「俺だって行きたいよ。学校。俺のベストプレイス」

「ベスッww 自宅じゃないんかいっw」

「学校は第3のベストプレイスなのっ!」

「ベストプレイスいっぱいだなっ!?」

「因みに自宅が1番で、2番目がここね」

「えっ、ありがとうっ!?」

「でさ、今文化祭準備期間中でしょ?」


箸でちょっとくっついた素麺をほぐしながらそう言う顔はとても暗い。学校に来ないことと文化祭準備期間なことになにか関係があるのか。

別に学校でないと会えないわけではない。こうしてご飯を作りに来てくれて一緒に食べたり、休日には買い物や遊びに連れて行ってくれたりもするが、やはり今まで学校でも会えていたのが会えなくなるのは少し寂しい。


「文化祭準備期間だとさぁー」

「うん」

「学生が普段入らない教室にも出入りするでしょ?」

「うん」

「俺の第3のベストプレイスINベストプレイスである美術準備室も例外じゃなくてさぁー」

「ややこしいなっw」

「まぁ、そんな感じで隠れるのが大変なわけよ」

「なるほどw ってか前から気になってたんだけどさ、美術準備室から出て来てないのに何故か居なくなることあるじゃん?あれどうなってんの??」

「……………」

「………?」

「…………………………」

「……………ん??」

「秘密っ!」

「ひっぱるなぁ!?」
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