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慰弦

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- 19章 -

- 矛盾と決意 -

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「あー….つっかれたぁー」

無事お泊まり会を終え2人を見送った安積は、急激に静かになった部屋の中でソファーに体を投げ出して1人ごちた。

盛大にため息をつき静かに目を閉じる。凄く楽しくて、でも凄く疲れて、休みたいんだけどその後の静けさは寂しくて、なんとも言えない気持ちになる。また学校で会えるでしょうと言われればそうなんだけれど。


「宿題も2人と一緒に終わらせたし、微妙にお腹空いてるけど作るのめんどいし…今日はもう風呂入って…紅茶飲みながらテレビでも見てのんびりすっかなぁ…」


本格的に動きたくなくなる前に行動に移さなければと重たい体を持ち上げソファーから足を下ろしたところで玄関の鍵が開く音が響いた。

1人暮らしのこの部屋の鍵を持ってるのは1人しかいない。ガサガサとビニール袋の鳴らしながらリビングへと近づく足音にリビングの入口へ顔だけを覗かし出迎えた。


ひじり、久しぶりー」

「久しぶりー!って、なんか疲れてる?大丈夫?」

「大丈夫大丈夫~。文化祭近いからさっきまであっきーと睦月が泊まりで来てて色々やってたんだぁ。全集中しすぎて疲れちゃた」

「演劇部の呼吸 w 君達は本当に全力だなぁ!良いね良いねっ!仲良きことは美しきかなっ!晩御飯でも作ろうかと思って来たけど休む所だったなら帰るよ?」

「いやっ、帰らないでっ!お腹空いてるけど作るの面倒で食わないつもりだったんだよね。でもお腹は空いてるっ」

「2回言ったっ!?  まぁ、1人だとあるあるだよねぇw なら素麺とか軽めのにしておく?」

「んー…でも作るの決めて材料買ってきてくれたんだよね?」

「そんな事気にしなくて良いの!無理して食べても美味しくないでしょ?」

「優しいっ!あまり重たいのは食えそうにないからさっぱり目なのが良いかなぁー、ってか素麺って聞いたら食べたくなってきたっ」

「それもあるあるだねw」


笑いながら通りすがりにくしゃくしゃっと頭を撫で台所へ向かう兄を眺めつつ、こうしてご飯作りに来てくれる事も一緒に過ごせる事も本当にありがたいよなぁーとしみじみと思う。

本当はこうして2人で会っている事を母親にもちゃんと伝え堂々と出来れば良いのだけど…


「あっ、作ってくれてる間に風呂入ってきて良い?」

「もちろんっ、ゆっくりしておいで!」

「ありがとー!」


風呂から上がったら美味しいご飯!唐突に舞い降りた楽しみに、幸せな気持ちと共に安積はバスルームへと向かった。


「あっ、掃除、してくれたんだ」


最後にバスルームを使ったのは市ノ瀬だったはずだ。シャンプーボトルやその他備品はそのままの位置にちゃんと戻されているし、髪の毛1本残っていない。


「ほんと、知れば知るほど、意外なやつだよなぁ…」


知らなかったのではなく、安積と出会ってから少しづつ市ノ瀬が変わっていったと言うのが正しい所なのだが、そんな事は知るよしもない。

そんなことを考えつつもコンディショナーを洗い流しボディーソープのポンプに手を掛けるがー


「痛っ…!え、えぇー…嘘でしょーw」


思っていたより力が入っていなかったらしい。
ポンプにかけた手がツルリと滑ると床と仲良しし、
じんわり訪れる痛みに苦笑がもれた。

『夢中ではしゃいで限界にも気づかないとか、子供かよw』

誰か体洗ってと言いたい程にはもう動きたくない。
兄なら頼めば嬉々としてやってくれそうな気がするのが、流石にそこまで子供では居られないし、そんな召使いのような事もさせられない。

『………よしっ、さっさと済まそっ!』

あまりダラダラとしてしまうともっと動けなくなってしまう未来が見える。美味しい夕飯に心奮い立たせ、急いで風呂を済ませるとリビングへと舞い戻った。
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