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- 19章 -
- 矛盾と決意 -
しおりを挟む“ちなみにここね”と向けられたスマホに表示された地図を見ると、冴霧家がやっている花屋は学校から数駅離れた場所に位置しているようだ。
数駅とは言え生活圏とは真逆な為利用したことはない。少し詳しく話を聞けばどうやらそこは実家が経営している花屋とは別に冴霧兄が経営している花屋のようで、部活で使う苗等でも密かにお世話になっているらしい。
「最初はさ、正直花って興味なかったんだよね。実家に就職とか全然考えてもなかったし」
「えっ?そうなんですか?…意外です」
「そう? でもお客さんが幸せそうに花選んでたりさ、贈り物なのか不安げな顔で買いに来て、でも帰りには両手いっぱい花を抱えて嬉しそうな顔で帰ってくのとか見てさ。なんか花って良いなって思って」
「…それ、なんとなく分かる気がします。花ってa波とか幸せホルモン分泌してくれるといいますし…自分の育てた花が誰かに幸福をもたらしたと思うと、凄く嬉しく感じますよね」
「もうっ、かったいなぁ! でもそうそれっ!!笑わないで聞いてくれて嬉しいっ!」
「すっ、すいません…」
「いやいやっ!勉強になったありがとうっ!」
「いえ…」
あくまで心理学観点からの話で固い自覚はなかったが…確かに固いかそうでないかを聞かれたら固いかもしれない。冴霧が笑ってくれたのが救いだ。
もっと言葉単純に、見て、綺麗と感じて、幸せを感じる。それが嬉しいと感じる。
ただそれだけを共有しあえれば良い時もあるのだろう。
「じゃぁ、卒業後は実家かお兄さんのお店に?」
「そ。大学進学も考えたけどやっぱり現場で学びたいなって。必須な資格は特にないし、あったら有利な資格はあるけど頑張れば働きながらでも勉強出来そうだから兄貴と一緒に花屋自営することにしたんだ」
「そうなんですね。でも先輩のお兄さんなら凄くしっかりしていそうですし、心強いですねっ」
「えぇ?うーん…まぁ、そうね。ただ知識もセンスもあるのに無愛想だからお客さんドン引きさせてるけどw」
「無愛想、って…なんだか先輩とは正反対ですね」
そうそう、本当似てないのよー!とケラケラ笑いながらも、しっかり良い所も認めて共に仕事をする事を決めたあたり兄弟仲は悪いわけではなさそうだ。
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