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- 18章 -
- 疑惑 -
しおりを挟むそして、2時間後…
「…なぁ、あっきー」
「……………」
「? おーい、明ぃー?」
「……………」
「あの、明さん?」
「……睦月、それじゃ気づかないよ」
「は??」
ロミオとマキューシオが出ている場面について聞きたい事があり班乃を呼んでみるが反応がない。
反応がない。ただの屍のようだ。
そんな言葉が脳内を掠めそうになったその時、安積がため息ともつかない深い呼吸を1度ついてから声を挟んできた。
「暗記中の明を呼ぶなら視界に入り込むか……」
呆れた表情を浮かべながら静かに立ち上がり班乃の背後に立った安積は、両耳へとゆっくり手を伸ばしぽんっとイヤホンを引き抜いた。
「びっ…くりしたぁ。なんです?どうかしました?」
「こう。こうしなきゃ駄目」
「あー……了解」
「?」
呆れた表情のままその両手の指先に摘ままれたイヤホンを向けられた市ノ瀬はどういう事だと一瞬戸惑うも、そこから漏れ聞こえる歌詞が分かる程の音量に直ぐ様なっとくの声をもらす。
「あっきーさぁ…いつも言ってるけど、いい加減耳悪くするよ?」
「すいません…でもこうしないと集中しづらくて」
「あっきーさぁ…いつもそう言うけど、いい加減耳悪くするよ?」
「……えっと…その、すいません…少し、少しずつ音量下げていく努力はするので、どうかお目こぼs」
「あっきーさぁ、いつもそう言ってるけど」
「あっ、はいっ、まず目下の行動として今から音量を半分にします」
「……………」
「あの……とりあえずは妥協点という事で…その、ご了承いただけると」
呆れと怒りと心配を含んだ有無を言わせぬもの言いと座った安積の目にひきつった笑顔を浮かべた班乃は姿勢を正して深く頭を下げた。
音量に関しては今までに何度も言われていたし、確かに耳が悪くなってはなにかと不便だ。話しかけられても気がつかないのは相手にも失礼だし、自分に非があるのは明らかだ。本心から心配してくれているのは分かるし、それは勿論嬉しい。
のだが、長年この方法でやって来たので今すぐに改善するのは難しい…
この妥協点でどうにか納得してくれないものか…
「…えっと」
「まぁ、良いよ。それで。今はねっ!!」
「あっ、ありがとうございます」
「今はだからねっ!!」
「はいっ!」
強調された“今は”の言葉を心に刻み元気よく返事をしたところで、些か都合の悪いこの話題から遠ざかる為市ノ瀬へと向きなおった。
「気がつかなくてすいません。僕に用でしたよね?」
「あー…まぁ、そうだったんだけど…とりあえずは大丈夫だわ」
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