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- 18章 -
- 疑惑 -
しおりを挟む自分も予定はないと伝えた後の2人の流れるような会話に置いてけぼりを食らっていた市ノ瀬にとって、急にどうすると聞かれてもなにをどうすると言っているのか不明である。
寝間着がどうのこうのと言う会話からして、班乃が安積宅にそのまま泊まるだろう事は予想できるがー…
『…あっ。もしかして、あれか? 今のは俺も泊まるかどうかって、聞かれてた…のか? 』
あまりに自分からは縁遠い話で直ぐに思い浮かばなかったが、客観的に考えれば“班乃は泊まるがお前はどうする?”という流れであり…
『どうするって…良いのか? 俺が?』
きっとこれは、昨日安積が言っていた班乃との“特別”の1つだろう。自分が泊まるとなるとまた特別が1つ減ることになる。それは安積が望まないことの筈だ。
『同じ部員だから気を使ってるとか?そんな理由…』
なにやら考え込んでいる市ノ瀬に顔を見合わせた班乃と安積が首をかしげ合う。2人にとってはいつもと何ら変わらない会話であって、なにがそんなに市ノ瀬を悩ませているのかー
「あっ!」
「あっ…」
「そっかっ!!」
「そう、でしたね」
「……なんだよ?」
ほぼ同時にその原因に気がついた安積等は揃って声を発すると、班乃が視線で安積に説明を委ねた。
「ごめんごめんっ!説明不足だったっ!舞台が近くなるとさ、よく家で泊まり込みで色々とやってるんだよ。暗記から読み合わせとか役作りとか、色々。だから今回もその流れで話進めちゃってて…なんかこう、睦月って良い意味で馴染んでるから、お前が初めてなの忘れてたわ」
「….や、別に良いけど」
「だからお前はどうするのかなって。せっかく役もらったんだし、一緒にやる方が色々捗るとも思うしさっ!その方が俺らも助かるよね?あっきー!」
「えぇ。ロミオとマキューシオの絡みもありますし」
「…そう」
「飯も風呂も家で良いよ!あっきーもそうしてるし。ただ、ベッドと来客用の布団1つしかないから、シングル布団ぎゅーぎゅーで2人寝るか、1人はソファーかだけど」
「……あ、僕ソファーで。ぎゅーぎゅーはちょっと」
「いや、そこは新参物の俺がソファーで」
「そんな露骨に嫌がんなくても……で、どうする?お前が嫌じゃなければ遠慮はしなくても大丈夫だけど」
「そうだな……」
別に嫌なわけではない。ただ安積の気持ちが気がかりだっただけだ。だが様子を見るに自分が行って嫌だと思われることはなさそうである。
開脚前屈をしおでこと両腕を床につけた状態のまま思案する市ノ瀬を立ったまま見下ろしながら、安積は少しばかり引きぎみな表情を浮かべた。
「お前…前世は軟体動物かなんか?」
「知るかよ、そんなん」
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