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- 18章 -
- 疑惑 -
しおりを挟む『まったく、朝からそんなに走って…元気ですね。…体力もちませんよ?安積』
『大丈夫っ!今日調子いいから!』
『なら、良いですけどね』
なんとなく、なんとなくだが、違和感を覚えてしまうのだ。前を歩く同級生に追い付くために走っただけでこの会話…普通するだろうか?
それだけじゃない。安積は……
「なぁ、明」
「はい?」
「朝さ、走ってきた安積に体力たないぞ、みたいな事いってたじゃん。あれ、どういう事?」
「どういう事、とは?」
「別にちょっと走っただけなのに、体力の心配なんてするかなって思って」
探るような市ノ瀬の視線を浴びながら、班乃は暫し不思議そうな顔をしていたが、それから“あぁ”と、納得したように表情を変化させると、今度は少し気まずそうな表情へと変化させた。
やっぱりなにかあるのか?
2人しか知らないようななにかが。
2人の特別が。
「まぁ、ちょっとしたネタのようなものですよ」
「…ネタ?」
「えぇ、安積が部活決める時にね、綾雪が走り高跳び進めたんですけど、か弱いんだもん!って断った事があったんですよ」
「うわーなんか想像つくわ…そういうことね」
でも…
本当にそれだけだろうか?
「さ、僕たちも教室急がないと本当に遅れますよ」
「うぃー」
どうにもそれだけじゃない気がして、心中のざわめきが収まらない。班乃の説明は別におかしな所はないのだが、ちょっとした事で安積を心配する班乃の態度と不自然に体育を全て休む安積。それの事を特に何も言わず受け入れている生徒と教師。いくら大の運動嫌いって言ったって、それを皆が受け入れているのはおかしい話だ。
絶対自分の知らないなにかがあるはずだ。でも、例えそうだとしても、本当の事を言わずに誤魔化している安積に聞いても良いものだろうか?そしてその本当の事を班乃は知っているのだろうか?
もしかしたら、班乃だけじゃなく他の生徒も教師も知っていて、知らないのは自分だけなのではないか?
なんだか、今日は朝からスッキリしない事ばかりだ。モヤモヤする気持ちを振り払うように、下ろしている両の拳に全力で力を入れ深呼吸と共に力を抜くと、今度こそ教室へと向かう足を速めた。
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