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慰弦

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- 18章 -

- 疑惑 -

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班乃がロミオ以外の配役に希望を出すのであれば…

自身の希望は、1票が3票分として数えられる。分かりやすく言うと、他部員の票は1票1ポイント、自身の希望は3ポイントと数えられるのだ。

班乃がロミオ以外の配役に希望を出し、市ノ瀬がロミオで希望を出した場合、2人のポイント差は他部員票を含めなければ、スタート時は3ポイント市ノ瀬が有利になる。

そうだとしてもロミオ役を勝ち取るのが難しそうなのは変わりなさそうだが…


「俺も、駄目元でロミオ希望出してみよっかな」

「良いですね。やってみたい役はどんどん希望出さないと後々後悔する場合もありますし」


少しばかり自信のない字で第1希望にロミオと記入すると、しげしげと希望用紙を見つめる。

ロミオはやってみたい。でも班乃が居る限り先ほど安積に言ったような無駄な足掻きになるだろう。

それでも選ばれたとするなら勿論嬉しいが、相手は安積なのだ。

……いや、安積がジュリエットと決まったわけではないのだけれど。

様々な事が頭に浮かび上がるが、なるようにしかならないし今考えても仕方のない事だ。他に希望はないしと第2と第3希望は空欄のまま、投票箱へと投げ入れた。

そして残りの時間で他部員の推薦票もこなし、台本に目通しをしつつ朝練は滞りなく終了。今回は台本の完成までに時間がかかったため集計は急ピッチで進められ、午後練で配役は決まるらしい。

今日はなんとなく落ち着かない一日になりそうだと、決意か不安からか分からない溜め息をついた。


「なんかさぁ、どの配役に決まるかな??ドキドキワクワク!みたいなさ、そんな感じ、味わってみたいわ本当」

「もー、またそんな不貞腐れて…まぁ、気持ちは分からなくもないですが」

「悲しいよね、本当。本っ当。でもでも、睦月はなんの役になるんだろうな!!そこはワクワクだよ!ありがとう!」

「なんのお礼だよ、それ」

「だって文化祭は学年別の公演だし、3人で主メンバーに選ばれる可能性もあるじゃん?そしたら練習も楽しいだろうなぁーって!!はかどるし!」

「ロミオとジュリエットはもう決まったようなもんじゃん。そこだけで十分練習はかどるだろう」

「勝手に決めんなよっ!!」

「ほらほら、漫才はそこまでにして早く教室行かないと、1限始まっちゃいますよ」

「はっ!それはまずい!教科書忘れたから、綾に借りにいかなきゃいけないのにっ!」

「あほ、早く行け」

「じゃ、お先にっ!」


小走りで去っていく安積の背を見つめ、不意に朝の2人の会話が頭を過った。
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