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- 18章 -
- 違和感 -
しおりを挟む「や、ほら。やっぱりさ、作った側からすれば、不味くなかったかなぁーとか、口に合わなかったけど無理して食べてくれてたとかだったら、申し訳ないなぁーとか思うわけよ…」
「そうか?」
「そうだよっ。食べてる間ずっと無言で無表情だし、旨いのか不味いのかまったく分かんないし…」
「あー…味は、まぁ、普通だったよ。」
「…普通、ですか」
「普通」
悪びれもせずさらっと言われてしまったらそれ以上聞くことは出来ず…小さなため息と共に食べ終わった皿を重ねお盆に乗せた。
「それにさ、せっかく1汁3菜作ったのに完璧な片付け食いするし。味付けもバランスもちゃんと考えて作ったのに」
「…お前がそこまで考えて作ってるとは思わなかったわ」
「美味しく食べて欲しいなって思って、俺なりに頑張って作ったのに」
「…悪かったって。そんな拗ねんなよ」
「まぁ、お前が太らないように片付け食いするかもって事はちょっと調べれば分かった事だし。俺が悪かったのかもしれないけど」
食器をかたしながら無表情で淡々と話す。普段まったく見せる事のないそんな安積の態度に流石の市ノ瀬にも多少の罪悪感が生まれ、なんとなくゆっくりと姿勢を正し小さく頭を下げた。
「……今度からは重ね箸、気ぃ付けるわ」
「………………」
「…………………………」
見つめ会うこと数十秒。
何故か実数以上に長く感じられる。
食べる順番を気を付けながらの片付け食いは太りにくくする効果がある。自宅でもそうしていた為自然とやってしまったが…
よくよく考えれば作ってくれた人に対する気遣いやマナーは欠落していると捉えられてもしょうがない。
どんな食べ方でも安積は何も気にしないだろう、特段なにかを考えて作ったりしてないだろうと軽視していたのも事実だ。
軽視せずに最初から三角食いをするか、もしくは片付け食いをする事について許可をとっておくべきだったのかもしれない……
沈黙に耐えかねた市ノ瀬が謝罪を口にしかけた瞬間、その沈黙を破るかのように安積が小さく吹き出した。
「………おぃ。なに笑ってんだよ」
「ぃや、いっ、ふはっ、ふははっ、いや、あのさ、言った事は嘘ではないけどさっ、別に怒ってる訳じゃないし、まさか、お前がそこまで気にしてくれるとは思ってもなかったからっ」
「……バカにしてんの?」
「いや、違う、嬉しいの」
「はぁ?」
「とにかくだ、三角食い絶対推奨ではないし、外で食べる時だけ気を付ければ良いくらいにしか思ってないから。お前がそういう理由で片付け食いするなら、それに合わせて作れば良いし」
「…そーですか」
「そーですよ。じぁ、味は普通の晩飯の片付けしてきまーす」
あぁ、そこは気にしていたのか。
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