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- 18章 -
- 違和感 -
しおりを挟む「にしてもさぁ」
「なんだよ」
「本当にしょうが焼きで良いの?」
「なんでだよ」
「作るのが簡単ってのもあるけど、前に食う物は気にしてるって言ってたじゃん?体型維持、とかなんとか。だからカロリーがーとか言われると思ってた…」
「あぁ。…まぁ、カロリーを気にしていないと言えば嘘にはなるけど…」
「けど?」
精肉売り場でしょうが焼きの肉を見繕いながら歩く男子学生2人は、主婦や家族連れが比較的多い時間帯であるがゆえに大分浮いてる様に思えた。
安積は特に気にした様子ではなかったが、殆どと言って良いほど買い物には出ない市ノ瀬にとっては大分居心地が悪い。
そんな気持ちを吹き消す様に話しに集中していると、安積から思わぬ質問が飛び出してきた。
まさか食に気を使っていると言う話を覚えているとは思わなかったので驚きはしたものの、些細な会話を覚えていてくれた事に嬉しさもあった。
「親にな、調味料にもカロリー含まれてるから計算して作ってくれって言ったらめっちゃぶちギレられたんだよな。 だったら食材から用意して自分で作れって…」
「…それはおかんに同意だな。毎日の食事でそこまでやってらんねぇーよ」
「まぁ、今思えば俺も自分でやれよって思う。だから今は普通に作ってもらって量で調節してんの。高カロリーなものは食べる量を減らすとか」
「なるほど…。 じゃぁ味付けは普通にするとして、あんまり量作らない方が良いかな。この肉だったら何枚くらい?」
「あー…まぁ、お前は気にしなくていいよ」
「えっ、なんでよ?」
疑問げな顔で唐突にのぞき込んでくる安積と至近距離で目が合い、その近さに思わずパッと顔を反らす。
『ちょくちょく思ってたけど…こいつ距離感バグってるよな』
パーソナルスペースのパの字すらなさそうな態度があまりにも居心地が悪い。突き放すように安積の頬に手を添え押し返すと、直ぐ様不満げに口を尖らせた。
「なにすんだよっ!?」
「なにすんだよじゃねぇよ。近ぇよキモいな」
「きっ!?」
「出されたもんは普通に食べるってだけ。深い意味はねぇよ」
「なんだよせっかく気ぃ使ってやったのにっ!別に良いよっ、それなら普通に作るからっ」
『んな嫌いなもの遠ざける勢いで突っぱねなくても良いじゃんっ!地味に傷つくっ』
とは言えなにを不快に思うのかが人それぞれだと言うのは理解の及ぶ所である。距離感がどうとかを意識したこともなければ誰かに指摘された事もなかったが、市ノ瀬が不快に思うというのなら気をつけていかなければならないだろう。
『…まぁ、いいや。それよりも今は夕飯考えなきゃ』
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