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- 17章 -
- そろそろ本腰入れましょうか -
しおりを挟む「…まっ、またまたぁ会長ってばっ!!止めてよねっ、そんな不安にさせるようなこと言うのっ!」
「でも人生何があるか分かりませんから。仲の良い人と険悪になったり、目の前に居る人が居なくなったり、しかもそれがほんの一瞬の出来事だなんて事もあり得る話ですから」
「………それ、は」
「あぁ、そう言えばこんな話も」
意識的に作った笑顔も発した声も、軽く受け流され忠告は続いていく。誰かをいじって遊んでいる時のような笑みではなく、最早無表情に近い笑みを浮かべる班乃の口からこれ以上なにが飛び出してくるのかと考えると心臓が痛い。
「とあるクリスマス、幼馴染であり恋心を抱いている少女に告白をしようとしていた少年の目の前で、少女が交通事故に遭い亡くなってしまったという悲しい事件があったそうです。思いを伝える所か、声を聞くことも、触れあうことも、笑いあう事すら出来なくなってしまったんです」
「……なっ、にそれ。…つら」
「…まぁ、なにが言いたいかというと、何事もタイミングが大事と言うことです。その少年が告白を違う日にしていたら。待ち合わせを違う場所、違う時間にしていたら。そもそも迎えに行っていたら。事故が起こる事はなかったかもしれない。もしもなんて話し始めてしまったらキリはないですけどね」
「……………」
「焦らず待つのも大切ですけど、手遅れになる前に行動を起こした方が良いことも絶対にあるんですよ。だからね、大切な親友であるお2人には手遅れになってほしくないなと思いまして、少しばかり助言させて頂いた…んです、けど…綾雪?」
「……………………………」
そこには空を見つめたまま口を固く閉じ、眉間にシワを寄せ1ミリも動くことなく、まさに銅像の如く固まっている植野がいた。まるでそこだけ時間が止まっているかのようだ。
「あの、大丈夫ですか? 綾雪? もしもーし」
目の前で手を振っても微動だにせず、心配になり肩を軽く揺さぶってみると、ようやく植野はハッと息を吐き目に光を取り戻した。
「あっ、ごめん会長っ!ごめんっていうか、止めよもうっ!マジトーンで話すからホントにそうなったらって…こわっ!まじこわっ!!」
「そんなにでした? すいません…心配だったもので、つい」
「ついって!? ありがたいけどさっ!」
「まぁ、最後のはちょっとオーバーでしたけど…ただ、ね。ほら、いつどこで何がどうなるかなんて分かりませんし、タイミング間違わないようにしてくださいね事で」
予想以上にこの世の終わりの様な顔で思いつめる植野に戸惑い、さすがにかわいそうだったかとフォローと共に軽く肩を叩いた。
「でもそっか。タイミング…タイミングねぇ…」
確かに、いつどこで何がどうなるかなんて誰にも分からないし、分からないからこそ、誰もが“何か” が悪いことにならない様に生きているじゃないだろうか。
自分の母親だって幸せな結婚生活が壊れ1人で息子を育てて行く事になるなんて想像もしなかっただろう。
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