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- 17章 -
- そろそろ本腰入れましょうか -
しおりを挟む「お前に言われるのは、其処はかとなくこの上なく腹が立つが、全くもっての正論だな。…世話かけた」
「…素直にありがとうと言えんのかお前は」
「ありがとう」
「……っ、なんだよ、気持ちわりぃなっ」
「自分で言えって言ったくせに失礼な奴だな。あぁ、今度両親がお礼したいって。紗千の事とか色々」
「別にいらねぇよ。大したことしてねぇし」
「そう。俺は助かったけどな。お前がそういうなら親には必要ないって伝えとく」
気まずそうに顔をそらした市ノ瀬と通常運転に仏頂面を浮かべている愛しの鈴橋が、前よりも親しそうに自分の知りえない話をしているのを目にすれば、複雑な感情が増幅するのも、致し方ない事であって…
『というか…あれっ?むっちゃんって紗千ちゃんに会った事ないはず、だよね?』
班乃や安積のように園の手伝いもしていないし、鈴橋からもたまたまどこかでばったり会ったと言う話は1度も聞き及んでいない。
『 って言うか、今の会話なにっ!? 紗千ちゃんの事とか色々って!親御さんがお礼って!?』
予測するに、熱を出した鈴橋の為に看病や紗千の面倒を見たのが市ノ瀬と言うことなのだろうが…
『なんで? どうして? どうやって?
なんで俺じゃなくてむっちゃんなの!?
むっちゃんだって部活だったはずだよねっ!?
がっくん自らむっちゃんに助けを求めた訳じゃないだろうし…なんでがっくんと一緒に居れたのっ!?』
「良かったですね。雑誌の発売日が昨日で」
植野が1人悶々と考え込んでいた間にも会話は進んでいたらしい。
やけにハキハキとした聞き取りやすい班乃の声で現実に戻され顔を上げると、声の持ち主は視線だけを植野へ送っておりバチッと視線があった。
その目は笑みを称えている。
それはもう、1人悶々としていた植野の心中を分った上で楽しんでいるかのような目だった。
気まずいやら、恥ずかしいやらで、然り気無く視線を反らす。
「良かったというかなんというか…雑誌買いに行ったら急に足に絡み付かれて号泣されるし、せっかく部活休んでまで買いに行ったのに1冊買い損ねたし…」
「そうだったのか…なんか、悪かったな。まさか1人で買い物行くなんて予想もしてなかったから」
「や…良いんだけどさ、別に。そんなことは」
「そうそう、雑誌より紗千ちゃんの安全だってっ! って言うかなんで睦月に声かけたんだろ? もっと優しそうな大人はたくさん居ただろうに」
「…多少は自覚あるから敢えて文句を言うのは止めておくが」
「あっきー。睦月が素直で気持ち悪い」
「まぁまぁ…良いことじゃないですか」
「文句を言うのは止めておくがっ! とりあえず兄貴と同じ服着てたから良い人だと思ったって言ってたな」
「あらら、良い人だとは限らないのに…」
「紗千にはちゃんと言っておかないとな」
「その上、連絡先とか住所だとか書いてある、なんつーの?保育園の連絡帳渡されてさぁ。 まぁ、そのおかけで、両親に連絡とったり家まで送ったり出来たんだけど…」
「……紗千にはちゃんと言っておかないとな」
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