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慰弦

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- 17章 -

- 初体験は同級生の妹 -

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「じゃぁ、パッチンって?」

「ん?……んー」


別に隠すことでもなんでもない。ただのご褒美だ。ただそれを言うのは少し気恥ずかしく、少し悩む素振りをしてから振り返るとものありげに笑って見せた。


「プレゼント」

「は?」

「じゃ、お前もあんま無理すんなよ」

「ちょっと、プレゼントって」

「いらなかったら捨てていいよ」

「いやっ、そうじゃなくてー」

「紗千は悲しむだろうけどな」

「悲っ」

「じゃぁな」


まだなにか喋っている鈴橋の声を背に、もう用はないと玄関のドアを無慈悲に閉めた。まだ妹を抱えていたし追いかけてくることはないだろう。

すっかり真っ暗になった帰路を歩きながら、涼しくなり始めた風を頬に受け目を細める。

実際のところ紗千の所持金はゼリーを買える程しかなく、買い物代金の殆どを支払ったのは市ノ瀬だった。まだ現金の計算や使い方を良く分かってなかったのだろう。

でも、そんな事はどうでも良かった。

そう思えるくらい、今日の出来事は市ノ瀬の中で大きな物だったからだ。

子供に対する価値観や同級生の意外な一面、様々な事を教えられた気がしてなんだか自分も成長出来た気がする。

それのお礼のようなものだ。

心に灯った暖かな気持ちに自然と笑顔になる。

いつだったか安積が熱弁していた〝友達論〟が、今なら少し理解出来た気がした。


「友達、ね。 悪くないな」


初めてと思えるほどの穏やかな気持ちのまま、市ノ瀬は自宅へと帰っていった。
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