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- 17章 -
- 初体験は同級生の妹 -
しおりを挟む「あー……腕が、つる………」
時計の針はすでに21時を指していた。
鈴橋の両親からはリダイアルがあり、事情の説明と現状報告は済ませてある。
あの後泣きわめく紗千をとりあえず家の中に入れ、倒れ込んだ鈴橋を何とか持ちあげると2階に運び布団に投げ込んだ。直ぐに帰る筈が泣き止まない紗千を1人残すことは出来ずせめて泣き止むまでとあやしていたのだが…引っ付き離れず今の状態である。
泣きつかれて腕の中で寝てしまった紗千をどうすることも出来ず抱き抱えたまま、そろそろ腕が限界へと近づいてきた。
「…どうすっかなぁ」
起こさないように寝かせて帰るのもなんだか気が引けるし、鈴橋よりも先に目を覚ましてしまったらまたなにかあるかも分からない。
鈴橋が起きるまで、または両親が帰ってくるまで待ってるべきかー
でも時間も遅いし、発売日にわざわざ部活を休んで買った雑誌だって読みたいし、むしろもう一冊の雑誌買い損ねたし。ーというか、腹も減った。
「………んっ」
悩みかねていたその時、ベッドで眠り落ちていた鈴橋が微かな声をあげうっすらとその両目を開けた。
疲れきった目が市ノ瀬へと向けられ数回瞬きを繰り返した後、ゆっくりと上半身が持ち上げられる。
「起きんな。まだ寝てろ」
「…平気。……その、妹が…迷惑かけたな」
市ノ瀬の腕の中で静かな寝息をたてる妹を眺めつつ、暫しの沈黙のあと大きく息を吐くといつもからは想像できないような弱々しい声で鈴橋は謝罪を口にした。
「……良いよ、別に。大したことしてねぇし」
「…そう」
気の聞いた言葉を言うのはどうも苦手で、沈み込んだ相手を目の前にし再び沈黙が訪れる。
ベッドの上で身を縮め、ぎゅっと両膝を抱えた鈴橋はその両膝に顔を埋めた。
「………紗千、どこにいた?」
「駅前のデパート。道に迷ったみたいで、制服が一緒だったからって、声かけてきた」
「…………そっか」
「…………………」
くぐもった声は、少しばかり泣きそうな声に聞こえる。小さく鼻を啜る音が聞こえるが、熱のせいなのか、泣いているのかは判断がつきかねた。
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