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- 17章 -
- 初体験は同級生の妹 -
しおりを挟む「あのねっ、紗千ねっ、ぷるぷる買ってきたのっ!あとーえっと…」
「ポカリな」
「そうっ!ぽかりっ!!」
「デパートで迷子になってたから送りに来た。じゃぁ、俺は帰ー」
「ーっの、馬鹿っ!」
帰ると言いかけた言葉は鈴橋の怒声によって遮られた。抱えた紗千を下ろそうとした中途半端な姿勢のまま鈴端を見上げると、その目は涙の膜でキラキラと光っており頬は紅潮している。
これは熱のせいなのか、はたまた別の意味があるのだろうか。しかしそれよりもー
「……ばか、って」
「どれだけ心配したと思ってんだっ!! いつも1人で居なくなるなって言ってるだろっ!?」
いつも冷静な秀才から飛び出した子供のような文句に全てを持っていかれ突っ込みたい衝動にかられるが、切羽詰まった様子の鈴橋に流石にそれは戸惑われた。
「ちょっと待てってー」
心配だったのは分からないでもないが、腕の中でびくつく少女を感じればそんな急に噴火させなくてもと思ってしまう。
しかし勢いは止まらず紗千の両肩を掴んで物凄い勢いで叫ぶ鈴橋を止めようとするが、その勢いは止まりそうもなかった。
「なにかあったらどうするんだっ!! 車に跳ねられたら!? 怪我したら!? 死ぬかもしれないだろっ!? 誰か知らない人に連れてかれたらっ!? 乱暴されたらっ!? もう、お家に帰れないかも知れないだろっ!? 紗千がいなくなったら、皆悲しむの分かんないのかっ!?」
突如鬼の形相で叫ぶ兄の勢いに呆気にとられ呆然としていた紗千だったが、怒られているのを理解した瞬間、ぶわっ、とその両目に涙が溢れた。
「ご…ごめんなさぁぁいっ! お、お兄ちゃん、だってー早く、元気にってーおもっ、思ってーうぅっ、うっ…」
怒られた事に耐えきれず、耳の直ぐ横で怪獣のような金切り声を出し泣き叫び始めた紗千の声に市ノ瀬は顔をしかめる。
だが、鈴橋の怒声は止まらない。
こんな供が1人で出歩くなんて、只でさえシスコン気質な鈴橋が怒るのも無理はない。だが兄の為にと1人勇気を出して買い物に出かけた経緯を知っているぶん、やるせない気持ちにもなった。
「なぁ、ちょっと落ち着けよ」
噴火山のようになっている鈴橋を落ち着かせようと肩に手を置いた瞬間、少しばかり自分より低い位置にあった鈴橋の頭がその視界から消えた。
「……は?」
市ノ瀬の体を支えにするように触れていた鈴橋の手がズルズルと下へ下へとずれていき、そのままその体が玄関へと崩れ落ちる。
「えっ……えぇー……?」
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玄関へと倒れ込んだ兄。
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