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慰弦

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- 17章 -

- 初体験は同級生の妹 -

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「…えっ、なに?」

「あの…これ、開けてもらっても良いですか?」

「…え?」


思わず聞き返し少女を見返すと、申し訳なさそうに、そして恥ずかしそうにおずおずとペットボトルを差し出し続ける。


「あの…紗千ね、これ開けられなくて、いつもお兄ちゃんに開けてもらうんです」


不安げに目線を泳がしながら遠慮がちに見上げる目は、先程泣いていた影響からか少し潤んでいて頬が紅潮していた。

『かっ……』


「えと……あの、ごめんなさい」


固まったままま動かない市ノ瀬を見てどうして良いか分からず、もしや頼んではいけないことを頼んでしまったのでは?と、紗千はペットボトルを再び自分の膝へと戻した。

『なにこれ………

かわいい………?

いや、まさか。

いやいや、まさかね。

いやいやいや、まさかですよっ!?』


咄嗟に紗千から顔を背け、にやける口元を手で覆い隠した。

子供なんて、わがままで理解力のない自分本意な生き物だと思っていた。それが子供というものだと思っているし、別にそれが悪いというわけではないのだが、だからこそ子供が嫌いだったのだ。

だが、この子はどうだ。

確かに最初は人目も憚らず泣き出し迷惑この上ないと思いはしたが、落ち着いてさえいればお礼も謝罪もしっかりと口に出来る子だし、完璧ではないが年上に敬語も使える。

しかし、それ以上に…

かわいい。

潤んだ黒目がちな大きな目に、頼るように抱きついてきた小さな両腕、今も離さない制服を掴んでいる手、白い肌に紅潮した頬、素直な心。

こう、なんというか、守ってあげたくなるような、抱き締めてあげたくなるような…


まさか


恋?

『……いやいや、落ち着け。んなわけないだろ』

こう、心が暖かくなるというか、なんというか…

父性本能を擽るというのは、こういう事なのかもしれない。

少し落ち着きを取り戻し少女へと視線を向けると、居心地悪そうに膝の上のペットボトルに視線を落としている。

1人で悶えたり感心したり父性本能をくすぐられている場合ではない。

少女の手からペットボトルを取り上げキャップを開けて渡してやり、不安そうな表情を一変させて満面の笑みでお礼を言われればー

鷲掴みされたように心臓が閉まった。
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