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- 17章 -
- 初体験は同級生の妹 -
しおりを挟む「今日はずせない用事があるので、申し訳ないですがお休みさせて頂きます!」
と、元気良く部活を飛び出したのは1時間と少し前だろうか。
市ノ瀬は今日発売のファッション誌を大事そうに抱え、生憎売り切れていたもう1冊の為に他の書店へと向かっていた。
早く読みたい気持ちを押さえつつ、書店のあるデパートへ入ろうとしたその時ー
ドンッと背後から太ももあたりに衝撃が走ったかと思うとすぐさま何かが絡み付いてきた。咄嗟に壁に手をつき転倒を回避すると驚きと共にその正体へと目を向けるがー
「なっ!! なんなんだっ……ょ?」
なにが起こったのか分からず飛び出した文句は、見下げた視線の先に居た予想外なものに疑問符がついた。
しばし、沈黙が走る。
予想外を見つめたまま固まり動かない市ノ瀬を、周りは不思議そうな顔で一瞥してはそのまま通りすぎていく。
そんな事などお構い無しに、太ももに巻き付いたものはいまだ外れることなく力を込め続けていた。
『えっ、なにっ?どういう状況っ!?これっ!!』
というか…
「……え、えと…お前、誰?」
困惑を隠しきれない声色で太ももに巻き付いてきた正体に話しかけてみる。
そこに居たのは、人気のキャラクターが付いているゴムでツインテールを結び、薄い水色のワンピースにピンク色のカーディガン、背中にうさぎのリュックを背負った、恐らく幼稚園児くらいの歳の子だった。
急ぎ懸命に頭を働かせてみる。
知り合いにこのくらいの歳の子は居ただろうかと。
姉にも近しい親戚にも子供は居ない。自分の知る限りは両親も子供の知り合いなんて居ないし、自分自身にもそれ以外の子供の知り合いは勿論居ない。
『となると、こいつは誰だ?』
「…おい、誰だよ、お前。 親は? 」
困惑する頭でなんとかそう絞り出したが、足に絡み付いた子供の両手は緩むことなく、むしろ余計込められた力でぷるぷると震えている。
『…どうすんだよ、これ』
デパートの入り口の為人通りも多い。ずっと立ち止まっている2人に向けられる人々の目が、徐々に怪訝そうな目に変わってきている気がした。
このままだと警備員やらなんやらを呼ばれかねない。
それだけは勘弁してほしい。
雑誌だってもう1冊はまだ買えていないし、部活を休んでまで来たのだ。早く買って帰って読みふけりたい
「なぁ、なんか言えy」
問いかけたその瞬間、少女が勢い良く顔を上げ市ノ瀬を見上げた。
『あーやっぱ知らないわ、こいつ』
と、やけに冷静に思ったその時、少女の顔が一気にくしゃりと歪んだ。
『あ、泣く』
これまたやけに冷静に考え、だが冷静で居られるのもこれまでだった。少女は加減のない声量で泣き声を上げ、両目からぶわぁっと涙をこぼしはじめたではないか。
『やっ、まずいまずい、これはまずいっ!』
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