355 / 1,142
- 17章 -
- 文化祭まで後1ヶ月弱 -
しおりを挟む『感情豊かで見ていて本当に面白いですね』
そんなことを思われている事なんて思いもしないであろう安積は盛大に溜め息をつき、黒板に書かれている文字を心ここに非ずといった様子でノートに書き写していた。
後で慰めてあげないとなぁーなどと考えながら安積を見ていると、先週の席替えで彼の真後ろになった人物が静かに手を伸ばした。
「?」
なにかが触れた気がしたのだろう。
安積が後頭部に手を当てて後ろを振り返った。
それに対して"なんだよ"とでも言っていそうな顔でちょっかいを出した張本人、市ノ瀬が眉をしかめれば、安積はなんでもないと軽く左右に首を振って前を向き直した。
『…まったく。なにをやってるんでしょうね、あの2人は』
そんな様子は2人の少し斜め後ろの席に座っている班乃には丸見えで、呆れて溜め息をつく。
『睦月も安積が落ち込んでるのは分かっているでしょうに。もう少し優しくしてあげても良いんじゃないですかね…』
その後ちょっかいを出された安積が振り返りちょっかいを出した市ノ瀬が眉をしかめる、という行動を2~3度繰り返した所で流石に安積も気がついたようだ。
文句を言おうと振り返り開きかけたその口は、直前で授業中だと思い出したのか1度悔しそうに閉じ、睨みをきかせると口パクでなにかを言い再び前へと向き直った。
後ろの席では、笑いを噛み殺した市ノ瀬が肩を揺らしている。
そんな2人の様子を見ていると、呆れもするのだが…
しかしだ。
先程まで落ち込んでいた筈の安積からは、すでにその様子は感じられなくなっている。
ここでふと気がついた。
もしかして、もしかすると…
『あれは睦月なりの励まし、だったのでしょうか』
しかしながら、落ち込んでいた状態から脱出させても怒らせるのはどうかと思う。
『…本当に分かりづらい人だなぁ、睦月は。ある意味、良いコンビかもしれませんね』
ちょっかいを出す事を単純に楽しんでいると言うことも考えられるけれど、そこはあえて良い方に考えることにした。
元気になってくれて喜ばしく思うのは間違いないのだけれど、慰める必要はなくなったという事に微かな無念を感じつつ班乃も授業へと意識を集中させた。
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。


塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
私の事を調べないで!
さつき
BL
生徒会の副会長としての姿と
桜華の白龍としての姿をもつ
咲夜 バレないように過ごすが
転校生が来てから騒がしくなり
みんなが私の事を調べだして…
表紙イラストは みそかさんの「みそかのメーカー2」で作成してお借りしています↓
https://picrew.me/image_maker/625951

初恋はおしまい
佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。
高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。
※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。
今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。

チャラ男会計目指しました
岬ゆづ
BL
編入試験の時に出会った、あの人のタイプの人になれるように…………
――――――それを目指して1年3ヶ月
英華学園に高等部から編入した齋木 葵《サイキ アオイ 》は念願のチャラ男会計になれた
意中の相手に好きになってもらうためにチャラ男会計を目指した素は真面目で素直な主人公が王道学園でがんばる話です。
※この小説はBL小説です。
苦手な方は見ないようにお願いします。
※コメントでの誹謗中傷はお控えください。
初執筆初投稿のため、至らない点が多いと思いますが、よろしくお願いします。
他サイトにも掲載しています。
美人に告白されたがまたいつもの嫌がらせかと思ったので適当にOKした
亜桜黄身
BL
俺の学校では俺に付き合ってほしいと言う罰ゲームが流行ってる。
カースト底辺の卑屈くんがカースト頂点の強気ド美人敬語攻めと付き合う話。
(悪役モブ♀が出てきます)
(他サイトに2021年〜掲載済)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる