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慰弦

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- 17章 -

- 文化祭まで後1ヶ月弱 -

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それに関しては班乃も同じ意見だったらしく、黙って鈴橋へと視線を投げた。

一同の視線を受け思わず眉間にシワを寄せると、すかさず眉間に植野の人差し指が刺さった。


「もー…いくら注目されて困ったからって、そんな怖い顔してたら駄目だってw」

「…あっ、あぁ」


『『『困ってたのか…!』』』


「栽培部の活動としては学校の花壇の世話ぐらいだな。 でも一言に世話って言っても、その植物に合う土だとか肥料だとか、その関係でなんの花を一緒に植えるのかとか、日当たりの関係でどこに植えるのかとか、色々調べたりはする…けど、あまり部員以外には関係ない話だから、知られてなくてもしょうがないと思う」

「ぅわ、地味。そんなことしてんの?たかが花にそんなことまでする必要あんのか?」


市ノ瀬の素直な感想に、今度は先ほどとは違う意味合いで、鈴橋の眉間にしわが寄った。


「…花にはリラックス効果があって精神を安定させるセラピー要素もある。けど、無駄に高い自己肯定感をお持ちで自己中心的なストレスとはそもそも無縁の人間には“たかが”ととれるだな。勉強になったよ」

「え?なに?喧嘩売ってる?俺がそんな人間だって言いたいのか?」

「違うとでも? ならお前は自分を知ることから始めるべきだな」

「あぁ゛っ!?」

「こっ、こらこらがっくん! 気持ちはわかるけど落ち着いてっ(´Д`;)」

「綾っ、お前それフォローにもなんもなってねぇの分かってるっ!?」

「ま、睦月が花を愛でるとか想像したら笑えるけど」

「安積…お前まじで屋上から落とすぞ?」

「嫌だよ。お前と心中とか」

「誰がするかっ!」


騒がしい…いや、賑やかなその風景は、とても見ていて楽しいのだけど…

さすがにそろそろ収拾しないと悪化しかねないだろう。

まったく、市ノ瀬が来てからというもの、鈴橋を怒らせる回数が増えたような気がする。

安積も安積で、すぐちょっかいを出すし。

それに、根が真面目で花や植物に対する愛情が人一倍ある鈴橋に部活に対する批判ともとれる言葉は禁句だというのに…

やれやれ、といった感じで、班乃は声を上げた。


「あっ!!」

「「「「!!??」」」」


急に上った声に、思わず一同言い争いを止め声の主を凝視する。

全員の意識がこっちに向いた事を確認すると、班乃は小さく首をかしげた。


「…あれ?なにか、大事な事を思い出した気がしたんですけど。 気のせいだったみたいです。すいません」


ニッコリと笑うその姿は、なんとも拍子抜けするというか…ある意味、険悪なムードが白けるというか。

これ以上言い争いをする気も失せた3人は、力が抜けたように自分の場所へと腰を下ろした。
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