346 / 1,149
- 16章 -
- もれなく知れます -
しおりを挟む「どうせ、皆して俺を見て楽しんでたんだろっ!」
悔しそうな震えるで苦言申し上げる市ノ瀬に
“とんだ被害妄想だ”
と、誰しもが思っただろう。
だがあえてそれを言葉にする事はさすがに…
「とんだ被害も「あーーー!!」」
素直と言うべきか流石と言うべきか、歯に衣を着せない鈴橋がズバッと言いかけた言葉を植野がなんとか遮る。
一瞬眉間に皺を寄せた鈴橋だったが面倒事を嫌う性格も手伝ってか直ぐ様スルーすることに決めたようで、窓の外へと視線を移したのを確認すると植野はほっと胸を撫で下ろした。
「ごめんね、むっちゃん。でも楽しんでた訳じゃなくてさ。月影さんから言わないでって言われてたし…」
「そもそも月影さんをそんなふうに見てたって事事態俺も植野も知らなかったし。八つ当たりすんな」
『それ言っちゃ駄目だよがっくんっ!!』
鈴橋の言う通りだ。興味を持っていた事や女性と勘違いしていたのは知っていた。しかし、市ノ瀬が月影に対し恋愛感情を抱いていた事は初耳の事実だった。
既に知っている体で話している市ノ瀬にその事実を伝えるのは酷な話というもので、あえて突っ込まないで居たのだがこうなってしまってはしょうがない。
「……今、なんて?」
「まぁ…そうだね。撫子の君に興味持ってた事は知ってたけど…でもほら、あの風貌じゃ無理ないと思うしっ!気にすることないよっ!」
「……………」
慌てた様子でフォローを入れる植野に思考が止まり、遅れて追い付いた理解に体温が急速に上がっていく。
既に安積か班乃から聞いていると思っていたが、それは早合点だったと言うことで…それなら今、自分はかなり墓穴を掘った事になるんじゃないだろうか?
あまりの失態に言葉をなくした市ノ瀬にフォローの言葉すらもなくなり、一同を冷えた空気が包み込んだ。
「まぁ、もう良いじゃないですか。過ぎたことは。学生で月影さんの事を知っているのは本当に僕らだけですし、これ以上なにか起きることはないですから安心してください」
「……そう。分かった」
これ以上のダメージは本人的にも自分達的にも辛いものがある。疑念や不安が残らないように市ノ瀬へと告げるとどこか安心したような表情を浮かべた。
市ノ瀬にしてもこれ以上話を掘り返して更なる墓穴を掘るのは避けたいところだしと大人しく頷くだけに止めたが…
「まぁ、見てて滑稽っちゃー滑稽だったけど」
「ああ゛!?」
「せーちゃんっ……!!」
ようやく落ち着きを見せかけたのに
なぜどうして荒立てるような事を言うのか…
普段なら人一倍空気を読むのに、どうも市ノ瀬相手になると突っ掛かりたくなるようだ。
鈴橋は鈴橋で静かに笑いを堪えているし…
植野が助けを求めるように班乃へと視線を投げると爽やかな笑顔だけが返され、もう出来ることはないとでも言うように食事へと戻っていった。
班乃までもこうなってしまっては、自分に出来ることももうないだろう。
“賑やかなやり取り”を収めることは諦め同じように食事へと戻り、飽きたように帰宅を促した鈴橋の声で一同ようやく解散となったのだった。
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説

ボクに構わないで
睡蓮
BL
病み気味の美少年、水無月真白は伯父が運営している全寮制の男子校に転入した。
あまり目立ちたくないという気持ちとは裏腹に、どんどん問題に巻き込まれてしまう。
でも、楽しかった。今までにないほどに…
あいつが来るまでは…
--------------------------------------------------------------------------------------
1個目と同じく非王道学園ものです。
初心者なので結構おかしくなってしまうと思いますが…暖かく見守ってくれると嬉しいです。
お前らなんか好きになるわけないだろう
藍生らぱん
BL
幼稚舎時代、執着の激しい幼なじみ達に酷い目に合わされた主人公が10年ぶりに幼なじみ達が通う学園に戻る事になった。
身バレしてまた付きまとわれるのは絶対に阻止したい主人公とヤンデレに片足突っ込みかけている執着系イケメン達のスクールライフ。
この物語は異世界のオメガバースです。(独自設定有り。追々作中か後書きで補足します。)
現代日本に似た極東の島国・大東倭帝國にある学園が舞台になります。
不定期更新です。

チャラ男会計目指しました
岬ゆづ
BL
編入試験の時に出会った、あの人のタイプの人になれるように…………
――――――それを目指して1年3ヶ月
英華学園に高等部から編入した齋木 葵《サイキ アオイ 》は念願のチャラ男会計になれた
意中の相手に好きになってもらうためにチャラ男会計を目指した素は真面目で素直な主人公が王道学園でがんばる話です。
※この小説はBL小説です。
苦手な方は見ないようにお願いします。
※コメントでの誹謗中傷はお控えください。
初執筆初投稿のため、至らない点が多いと思いますが、よろしくお願いします。
他サイトにも掲載しています。

真冬の痛悔
白鳩 唯斗
BL
闇を抱えた王道学園の生徒会長、東雲真冬は、完璧王子と呼ばれ、真面目に日々を送っていた。
ある日、王道転校生が訪れ、真冬の生活は狂っていく。
主人公嫌われでも無ければ、生徒会に裏切られる様な話でもありません。
むしろその逆と言いますか·····逆王道?的な感じです。

悪役令息シャルル様はドSな家から脱出したい
椿
BL
ドSな両親から生まれ、使用人がほぼ全員ドMなせいで、本人に特殊な嗜好はないにも関わらずSの振る舞いが発作のように出てしまう(不本意)シャルル。
その悪癖を正しく自覚し、学園でも息を潜めるように過ごしていた彼だが、ひょんなことからみんなのアイドルことミシェル(ドM)に懐かれてしまい、ついつい出てしまう暴言に周囲からの勘違いは加速。婚約者である王子の二コラにも「甘えるな」と冷たく突き放され、「このままなら婚約を破棄する」と言われてしまって……。
婚約破棄は…それだけは困る!!王子との、ニコラとの結婚だけが、俺があのドSな実家から安全に抜け出すことができる唯一の希望なのに!!
婚約破棄、もとい安全な家出計画の破綻を回避するために、SとかMとかに囲まれてる悪役令息(勘違い)受けが頑張る話。
攻めズ
ノーマルなクール王子
ドMぶりっ子
ドS従者
×
Sムーブに悩むツッコミぼっち受け
作者はSMについて無知です。温かい目で見てください。



ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる