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- 16章 -
- 本番と波乱 -
しおりを挟むどこか哀愁漂う弟を不思議に思いつつ、未だに魂の抜けている様な市ノ瀬へと視線を向けた月影だったが、“なにか”を感じとり直ぐ様気まずそうに視線を反らした。
『なんか、申し訳ないな…でも、なんでだろう』
普段なら“撫子の君”を見に来た生徒とは絶対に目を合わせたりもしない。楽しませる為なら設定は絶対に守る主義だ。なのに、なぜ彼を振り返ってしまったのか。
頭をもたげた疑問を解決すべく、原因である市ノ瀬をもう1度見つめた。
そしてー…
「あぁ、そうか…君の事が気になったんだ」
「…え?」
準備室で思わず振り返った理由が、今なんとなく分った気がした。
確証的なものではなく、直感が働いたというか…
単純に興味をそそられてしまったのだろう。
「君、凄くいい体してる」
「「……は!?」」
沈黙の中唐突に投下されたその発言に、安積だけではなく抜けていた魂を取り戻した市ノ瀬もはじかれたように顔を上げた。
「えっ、どーした聖っ、急になに言ってんの?セクハラっ!?」
「違うってww スタイル良い子にね、どうしてもレーダーが向いちゃうんだよ」
「スタイルって……あっ、そういう…」
「おっ、お前、なに1人で納得してるんだよ!?」
「やー…聖もね、仕事大好き人間だから」
「はぁ?」
本当の事が分かり見事失恋したとしてもつい先程まで好きだった相手だ。晴れやかにマジマジと見つめてくる月影に居心地の悪さと少しの照れくささが入り交じり落ち着かない。
『スタイル褒められた事と仕事になんの関係があるっつーんだよ…意味わかんねぇ』
「あぁ、ごめんね怖がらせて。変な意味言ったんじゃないよ?」
「…じゃぁ、どういう?」
月影は鞄から1枚の紙を取り出すと安心させるかのように微笑みかけてから、困惑している様子の市ノ瀬へと静かに差し出した。
『これが、なにか…?』
戸惑いながらも差し出されるままその紙を受け取り視線を落とすと書かれている文字を目で追った。しかしどうにも頭に落とし込めず、字面を声に出して読み上げた。
「Sunflowerデザイン事務所…代表取締役…?」
「そう!被服メインなんだけど、色々な会場とか絵葉書、絵本とかね、今は色々と手広くやってるんだ。服はデザイン初期からモデルさんの意見も取り入れつつ一緒にやってるから遣り甲斐が凄くて。だからスタイルが良い子見るとつい反応しちゃうんだよね」
「Sunflower…Sunflower?」
どこかで聞いたことがある。
つい最近。 というか、ついさっき。
「あっ!?」
「うっさっ!?吃驚したなもうっ!!なんだよっ、どうしたよっ、そんな大声だしてっ!」
『そうだよ、さっき読んだ雑誌…!!』
嘘を本当にするために立ち寄ったコンビニで読んだ発売される度に購買していた雑誌。今日発売のもので特集を組まれていた会社の名前が、確か…
『Sunflower、だったはずだ…』
「貴方がこの会社の…社長、なんですか?」
「う、うん…?」
「もしかして、最近雑誌で特集組まれたりとか、しました?」
「えっ? あぁ、うん。よく知ってるね?」
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