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- 16章 -
- 本番と波乱 -
しおりを挟むたまに父親みたいな事を聞いてきたかと思えば、こう、傍から聞けば口説いているようにも聞こえる恥かしい事を平気で言ったりもする。
最初はその度に恥ずかしくもなったものだが、今ではすっかり慣れてしまった。
しかし、この口振りだと途中のアクシデントには気がついていないようで、自分のアドリブもなかなかのものだったのだとー…
「でも…途中ちょっと違和感はあったかな?」
「えっ。ぃっ…違和感?」
「こう、聖が倒れるシーンで、1回切られたのにまた生き返ったでしょ? あれはあぁ言う脚本だったの?」
だと思ったが、そうでもなかったらしい。
『や、聖が鋭いだけっていう可能性も…』
なんであれ、バレてしまったのならしょうがない。日々精進あるのみだと落ち込みかけた心を奮い立たせた。
「あー…あれはね、ちょっと色々あって。…アドリブだったんだけど、 変だった?」
「ん? んー…ちょっと違和感はあったけど、変って訳でもなかったかな? あんまり気にする事ないと思うよ。それよりなにかミスでもあったの?」
「…まぁ、ちょっとね」
「そう。 でも劇は大成功だと思うよっ!すごく楽しかったし、見に行けて本当良かったっ!」
「本当にっ!?そう言って貰えると嬉しいっ! ありがとう!」
見に来てくれただけでも嬉しいのにここまで絶賛して貰えるとは思ってもおらず、言い表せないほどの嬉しさで今日のトラブルや市ノ瀬への心配事も些細な事のように思える。
『頑張って良かった…っ!』
食後のティータイムを楽しみつつ取り留めない話でまったり和んで居ると、いつの間にか時計の針は既に23時を回っていた。
「聖今日はどーする? 今泊まってく?」
「うーん…せっかくのお誘いだけど今日は帰るよ。 明日朝早いんだぁー」
「そっかぁ。 残念だけどそれならしょうがないね。 夕飯ありがとうっ!帰り道気をつけてっ!」
「ありがと!」
「明日もお仕事頑張って!玄関まで送るよ」
共に玄関まで向かい月影が靴を履いたタイミングで荷物を手渡すと、お礼と共に受け取った兄が最後に弟の頭を撫でる。
帰る時にいつもしてくれるこの行為が安積は嬉しかった。それに満面の笑みで返して、外に消えていく月影を見送る。
いつもは、それだけなのだが…
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