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- 16章 -
- 本番と波乱 -
しおりを挟む「疲れたぁー…」
解散した後、安積は疲れた体を引きずるように暗くなった帰路を歩いていた。
今日は心身ともに疲れた気がする。
いや、疲れた。
舞台でのこと、月影と市ノ瀬のこと。
考える事は多いけど、とりあえず今日は早く家でごろんとしたい。
夕飯はどうしようかな。皆でつまめる物しか食べてないからお腹すいた…残念ながら昨日の残りはないしこれから作るのも面倒だ。 もう買い置きしてるインスタントラーメンでも良いか。
そんな事を考えながら漸く着いた自宅玄関を開けると、誰も居ない筈の自宅に煌々と電気がついている。
それと同時に、とてつもなくお腹の鳴る匂いが漂ってきた。
自分の自宅に勝手に入って、勝手に料理をする人なんて1人しか居ない。
急いで靴を脱いで鞄を玄関に下ろし、上着を脱ぎながらリビングへと向かった。
「ひじりっ!」
「あっ、お帰り~聖! お疲れ様ぁ」
「ありがとただいまっ!なになにっ!? めちゃ良い匂いするんだけどっ!?」
「カルボナーラとポトフ、あとサーモンカルパッチョっ!」
「やばっ!!マジ美味そうっ!ってか絶対うまいやつじゃんっ!!さくっと着替えてくるっ!」
「おっけー、待ってるよ!」
月影と再開を果たした後、今まで一緒に過ごせなかった分を埋めるかのようにこうして時間を作っては遊びに来てくれるようになっていた。
班乃といい、月影といい、作る料理は本当に美味だ。
『自分ももっと勉強しないとなぁ。2人にも美味しいの食べて欲しいし…でもー』
今は夕飯!!
熱湯に入る某番組も吃驚なほどの早着替えを済ますとリビングへと飛び出す。
「いただきまーすっ!」
「召し上がれー!」
空いた腹にクリームソースのカルボナーラ…
『最強だっ!』
満面の笑みで勢いよく食べ始めた安積をしばし微笑ましく見つめていた月影も、目の前にある幸せを噛み締めるように1度目をつぶるとゆっくりと自分の分へと箸を伸ばした。
「今日、どうだった?うまく出来た?」
「…そりゃもうっ!! 台詞飛んだり噛んだりもしなかったし、あっきーがめちゃくちゃ練習付き合ってくれたからかいつもより余裕もあって楽しかったっ! 聖はどう? 俺達の舞台見るの初めてでしょ?」
「そっか、それは良かったねっ!演劇は学生だった頃に1回見たことあるけど、その頃とは全然違ってたかな?クオリティーもすっごく上がってし、感動しちゃった」
「本当っ!?」
「本当本当! それに…」
「それに?」
「聖、すっごく可愛かった」
「あっ、ありがとう!」
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