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慰弦

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- 16章 -

- 本番と波乱 -

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「なんだか、少し考えるのが億劫になってきました…そもそもあの人がうっかり顔見られたりなんてするから」

「なんか、ごめん」

「いえ、貴方が謝ることはないですって」


そうこうしている内に他校の演技が残り20分と知らせが入る。 そんなに長く話をしていたのか…荷物をまとめ2人は急いで更衣室をあとにした。




「お疲れ様ー!」


そんな掛け声と共に打ち上げが始まった。 30人程居る部員全員でファミレスに入るものだから、ホールの半分は大体学生でうめつくされる。

勿論、安積や班乃、市ノ瀬も参加していた。

皆で盛り上がる中市ノ瀬も合わせるようにして笑っては居るが、その表情にはどこか影が見える。

こだわりが強く完璧主義な市ノ瀬の事だ。

やはり、今日のミスを気にしているのだろう。


「あのさ、あんま気にすんなよ?」

「あ? …あぁ。その事はもう気にしてない。 次はもうないから安心しろ」

「おっ、おぅ…」


心配になり声をかけたがどうやらとても不要のようだった。切り替えの早さに呆れと感心を覚えつつも、見え隠れする影が舞台上のミスではないのなら…

『やっぱり、ひじりのこと…?』


「…じゃぁ、なにか他に気になることがあるんで
すか?」


安積の心を読んだかのような班乃の問いに口にポテトをくわえたままの姿勢で止まった市ノ瀬は、暫し固まったまま考え込み、そして意を決した様に顔をあげた。


「……笑うなよ」

「ん? ぅん?」

「客席に…居た気がしたんだ」

「…誰が?」

「撫子の君が」


『『バレてるっ!!?』』

班乃等は悩んでる市ノ瀬にバッと身を屈めお互いに見合う。


「ちょっと、バレてますよっ?気がついたら凄いって程普段と違ったんですよね!?」

「えっ、待って、怖い怖いっ!」

「…なにコソコソしてんだよ」

「やっ!!なんでもないよ!ねっ!?」

「えぇ、至って通常通りです」

「ふーん…?」


『急にスンッってなるあっきーも怖いっ!?』

その能力を羨ましく思いながら不信感丸出しの市ノ瀬にたった今届いたチキンを差し出しなんとかその場を誤魔化た。


「気のせいじゃないですか? だいたい、学校の七不思議が僕達の舞台を見に来る意味が分りませんし」

「それは…」

「そうそう、気のせいだって!」

「…まぁ、そうなんだけどさ。 そう、なのかな。 確かに前とはイメージは違ってたし…見間違えか」


『…どんだけ記憶してるんだよ』

市ノ瀬の記憶力を馬鹿にしない方が良いのかも知れない。 

でも、この場は上手く誤魔化せそうだ。


「まぁ、いつまでも考えてないでさ、打ち上げ楽しもうよ」

「せっかく初の舞台が終ったんですしね」

「…そうだな」


一応は納得してくれたらしく、その後月影の話題は出ないまま2時間ほどで解散となった。
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