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- 16章 -
- 本番と波乱 -
しおりを挟む「って言うか、睦月だけじゃなくて他の部員にだってバレる可能性だってあるわけだし、聖だってそれなりにバレないように気を付けるでしょ。 ま、そんな事より今は本番本番!」
「そう、ですね…それにしても、今回は本当余裕そうですね、安積」
「ねっ! 自分でもビックリしてるww でも油断したらこけそうだから、もう1回台本読んどこっと」
準備を終えた他の部員達も最後の調整に入ってるようで、安積等もそれに従うように本番に備え始めた。
その頃、会場近くの駐車場に月影の姿があった。
午前中に少しばかり仕事が入ってたのだが意外と早く終わり、一旦家へと着替えに帰ってから会場に来たのだが予想より早く着いてしまった。
静創学園の、更に言えば安積と班乃の勇姿さえ見られれば言い訳で、車内でギリギリまで時間を潰していた。
「そろそろ行った方が良いかなぁー」
倒していた背凭れを立てると、不意にサイドミラーに映った自分と目が会う。暫し自分と見つめあってから、難しい顔をして日除けのために常備しているサングラスを手にとってみた。
何度か掛け外しを繰り返した後、静かにサングラスを元の場所に戻す。
「変装には良いかもしれないけど…これじゃぁ折角の演劇が台無しだよねぇ」
サングラスを諦め、車内から出て鍵を閉める。大分暖かくなってきた日差しに目を細目ながら、漸くゆっくりと会場へと歩き出した。
会場に着き1階の売店で飲み物を買い喉を潤していると、丁度発表が終わったらしい生徒が続々と裏口から出てきた。
成功の言葉を口にしながら花を咲かせているその姿は微笑ましいモノがある。
だが、そんな生徒達の何人かが月影の姿を目にすると会話を止めた。
日本人にはあり得ない目の色と180後半の高身長、男としては珍しい膝裏程まである長髪で注目が集まるのはいつものことで、普段ならあまり気にしないのだけど…
飲みかけのペットボトルに蓋をして、少し早いがホール内へと向かった。
ホール入り口に辿り着いた時には先程の生徒逹の声は聞こえなくなっており、ほっと息を吐くと扉の縁に映った全身を見る。
静創学園においての自分は謎の人として通っているため、ばれないようにしてきたのだが…
オーバーサイズのジーンズとパーカー、目深に被ったキャップ。先ほどの生徒の視線からやはり目立ちすぎるだろうと、一纏めにしパーカーに閉まった髪。
それは普段なら絶対にしないような格好であって、自分自身かなり落ち着かない。
「やっぱり似合わないのかなぁ…」
注目を集めていたのは身長どうのこうのではなく、あまりの似合わなさが理由だったのかもしれない。
キャップを取って深く溜め息をつくもいつまでもこうしている分けにもいかず、静かにホール内へと足を進めた。
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