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慰弦

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- 16章 -

-本番と恋の始まり-

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『俺は、って……』

…駄目だ。 

完全に月影とどうにかなるつもりで居る。

月影自身の行動でばれてしまった事にまで責任を負う必要はないと思いはしたが、ここまで盲信してるとなると……

『もしコイツにバレたら…黙ってた俺らにもかなり飛び火するんじゃ…』

考えるだけで恐ろしい。

ここは今1度兄へと警告し、なんとしてでもバレないようにしてもらわないといけないだろう。先程はうっかり笑ってしまったが、自分も更に気をつけてー


「話、してみてぇな。どんな声してんだろあの人。…今度、話しかけてみるか。あれだけ綺麗なら、きっと声もー」

「ぐふっ…ご、ごほっごほっ!」


気を付けていこうと思った矢先、止まる事のない市ノ瀬の妄想に再び吹き出してしまったのを咳き込むふりでなんとか誤魔化した安積は、これ以上絶えられず一声かけてお手洗いとへと向かった。

慌てて席を立ちその場から立ち去る後ろ姿を見送った班乃だったが、今自分の立たされた状態に気がつきハッとする。

撫子の君に対して誤解と幻想を抱き、なんだか幸せそうな笑顔を浮かべている市ノ瀬を前にしてー

『この状況、僕にどうしろと…』

逃げた安積を少しだけ恨めしく思いながらも、次々に飛んでくる市ノ瀬の質問に当たり障りなく答えていく。


「それにしても、今まで誰も話しかけてないって不思議だよなぁ」

「不思議は不思議だからこそ良いって事では?」

「そんなもん?じゃぁ、話しかけたとしても他の人には秘密にしとかないとか。と言うことはさ、俺が話しかけたら話しかけた第1号的な? それは…それで良いな。話せたら報告するよ。どんな人だったかとか、色々と」

「あ…あはは、ありがとうございます」


『もう、知りすぎるほどなんですけど…』

なんて、言えるわけないけど。

その後小1時間ほど市ノ瀬の話を聞かされた後、無事開放された班乃の安積はくたくたになりながら各々自宅へとついた。

のんちゃんに貰ったからお裾分けっ!と月影に貰った紅茶を入れた安積は、盛大な溜息と共にソファーに深く腰を沈める。

市ノ瀬の話を聞けば聞く程哀れみが増し、その分だけ万が一の時の恐怖も増す。絶対にバレないように話をしなければならない緊張感は地獄そのものだった。

『そうだ…』

月影に話をしておかなければと携帯に手を伸ばすと、タイミング良く通知音が鳴る。

あまりの疲労に一瞬無視しようかとも思ったが、送り主の名を見ると地獄の様な時間を共に乗り越えた班乃であり、なにかあったのかもと急いでメールを開いた。
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