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- 16章 -
-本番と恋の始まり-
しおりを挟む「会長。 安積がヤケにしずかなんですが…」
「なにかあったの?」
昼休みの屋上。 いつものメンバーでご飯を食べている最中、一言も喋らない安積を不審に思った鈴橋と植野の問いに、班乃と市ノ瀬はそれぞれ異なった反応を見せた。
「明日、演劇部の発表があるんです。 他校の演劇部の方々や一般の方も来られるので、緊張してるんですよ。 今回は参加校が多いので尚更」
「誰がどれだけ居ようが自分に自信があれば関係ねぇだろ。情けねぇな」
「確かにその通りな部分はありますけど、そうあれる人は中々居ないですから。言い切れる睦月は凄いですね。僕もそうあれるように頑張らないと」
「……別に、凄かねぇよ。まぁ、がんばれ」
『『凄いな会長。もう手懐けてる…』』
鋭い言葉を投げつける市ノ瀬に対し、安積をフォローしつつも市ノ瀬をもちあげる班乃の態度に感心する植野らを他所に、市ノ瀬の言葉と同じくらい鋭い目付きで市ノ瀬を一瞥した安積が、小さく溜め息をついた。
「俺だけの事で緊張してんじゃねぇよ。音響も照明も大道具の移動も、裏方のミスは出演者しかフォロー出来ないの、分かってる?今回は入部間もない奴が裏方をウロウロしてるから、余計緊張してんだよ」
「…俺が失敗するとでも思ってんのか」
「とんだ自信家だな」
余裕なく攻撃的な態度をとる初めて見るような安積を、市ノ瀬以外の3人は幸喜の目で見つめていた。
「…なんか、変わったな。安積」
「んー…なんだろうね。 歳相応というかなんと言うか」
「喧嘩になりそうな原因を作ることはなかったですからね。皆お友達、みたいな安積が、こう…同級生と喧嘩、というか、険悪な雰囲気を作るなんて」
「いいコンビじゃん」
「そうか?」
「気を使い過ぎる事無く自然体で接することが出来る友達、と考えれば良い事ですよね」
「「友達じゃないっ!」」
ずっと口論していた2人だったが、ちゃっかりとこちらの話は聞いていたらしく、声をそろえて言った直後、不服そうに顔を見合わせた。
「「真似すんなよっ!!」」
言った文句すらも声があってしまって、後はにらみ合うだけだった。
「まぁ、何はともあれ、今までやってきた事を出せれば問題ないですから」
「それが出来るって結構凄い事だと思うんだけど」
「あー…せーちゃん、合唱コンクールでさえも大変だったらしいしね」
「リアルに人を飲む人始めてみました」
「…願掛けって結構効果あると思うんだよね」
市ノ瀬になんだかんだ言った所で緊張しているのは間違いはない。
『俺って普通の人より緊張しいなのかも。しっかりしないと…』
と言っても、今回は一役だし、出番と出番の間に台本をチェックする時間だってある。
大丈夫大丈夫。
そう言い聞かせた安積は、明日へと備えて今日は徹夜を決めたのだった。
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