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慰弦

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- 15章 -

-我侭-

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「じゃぁ、また後で!!」


昼休みも終わりそんな言葉で手を振り合い別れた一同はそれぞれの教室へと向かう。

やけにスッキリした表情を浮かべている安積の横で、足取り重く疲労濃くした表情の市ノ瀬が大きな溜め息をついた。


「なんなの、アイツら…等、は違うか。植野って奴」

「明るくて良い奴だっ!!」

「あれは慣れ慣れしいっつーんだよ」

「フレンドリーで誰とでも打ち解ける、僕も見習うべきですね」

「だからっ……や、もういい。もう良いよお前ら。もう良いよ」


呼び方が決まった後、昼休みいっぱい使って植野の質問攻めが市ノ瀬を襲った。

兄弟はい居るのかとか
恋人が居るのかとか
趣味は何だとか

最初は答えたくないと突っぱねていたが、植野のしつこさに負けて、後半は素直に答えていたのだった。


「にしても、お前に姉が居るとか意外。 お前性格難有りだけど見てくれは割りと良いし、きっと綺麗な人なんだろうなっ!」

「何を言ってんだ。 俺は性格も良いし、ついでに姉も美人だ。 姉は性格に難有りだがな」

「なるほど、兄弟揃ってみてくれだけなんだな」

「おまっ!!」

「仲良いですねぇ、2人とも」

「「どこがっ!!??」」


どう聞いても口論が始まる直前のような会話にもたらされた感想に反発の声をあげると、予期せずぴったりと声が合ってしまい反射的に顔を合わせるとバツが悪そうに顔をそらした。

こんなところ居てられないとでも言うようにズンズンと先を歩きはじめた市ノ瀬だったが、直ぐ様なにかを思い出したように立ち止まり振り返ると班乃の元へと走り戻る。


「どうしました?」

「…あのさっ」

「はい?」

「ちょっと話したい事があるんだけど」

「話したい事?なんですか?」

「………」


班乃の問いに答える代わりに、市ノ瀬は安積を振り返った。その目はどうみても、安積の存在を邪魔に思っている目で…


「……俺、先行ってるから」


胸を刺す疎外感をグッと押し込めて、下らない嫉妬をしてしまわない内にと安積は静かにその場を離れた。
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