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- 15章 -
-我侭-
しおりを挟むこれが仲が良いというなら、なにを仲が悪いというのだろうか…しかし全てを解決したかのような笑顔の班乃になにも言うことは出来ず
小さく名前を口にした市ノ瀬のぶっきらぼうな一応の挨拶が済むと、一同漸く少し遅めの昼食についた。
「むっちゃんさぁ」
「「「「…………」」」」
購買で買ってきたパンにかじりつきながら話しかけた植野の言葉の中に聞きなれない呼び名が混じっており、誰の事を呼んだのか考えた一同の頭の中に思い浮かぶのは1人しかいなかった。
自分達の中でそんなあだ名をつけられるとするならば…
4人分の視線が注がれた人物は流石にスルーも出来ず、絞り出すように植野へと問いかけた。
「…もしかして、俺の事言ってる?」
「え? だって、睦月でしょ? だからむっちゃん。 嫌?」
「嫌。 馴れ馴れしい。うぜぇ。」
「じゃぁ、つっきー!!むつきのつきで」
「話を聞けっ! 馴れ馴れしいっつってんのっ!」
「えぇー? じゃぁ、市ノ瀬だから…いっちゃんとかー、ちーちゃん、のんちゃんー、せーちゃんと…あ、のんちゃんとせーちゃんは駄目か」
「じゃぁ、市でいっちーとか?」
「睦月の月をとってつっきーとかも、違う人連想するので止めてほしいですね」
「あぁ…撫子の君ね」
「もうなんでも良いじゃねぇか、面倒臭い」
「良くねぇよっ!? 本人無視して話し進めんなっ!」
好き放題言っている4人の会話を止める為持っていた500mlのペットボトルをど真ん中へと叩きつけるように置くと、目論見通り会話は止まった。
会話は止まったが…
「そっか…どれも気に入らなかったかぁ」
「そういう問題じゃねぇだろっ!?」
「もう普通に苗字で良いだろ」
「えぇー…がっくん冷たーい」
「まぁ、本人が嫌と言うならしょうがないですよね」
「それは…そうだけど、なんか他人行儀じゃん?」
話題が止まることはなかった。
拗ねたように地面に “の” の字を書いた植野だったが、直ぐにパッと顔を上げて市ノ瀬の手を両手で掴んだ。
咄嗟に振り払おうとするが予想外の掴む力に、少しばかり植野が自分へと引き寄せられるにとどまる。
「やっぱり、むっちゃんで良いかな? 俺の事も好きに呼んでくれて良いし!良いって言うまで離さないからっ!!」
「~ー…っ、もう…好きにしろっ!」
馴れ馴れしく呼ばれるのも嫌だが、至近距離で両手を握られているこの状況の方が耐えがたい。
諦めた様に言い捨てた市ノ瀬の返答に、パッと顔を明るくした植野が喜びのあまり両手を広げ抱きつこうとー
したが、それは素早く突き出された渾身の力を込め突き出された市ノ瀬の両手で阻止をされる。
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