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慰弦

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- 15章 -

-我侭-

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「というわけで、今日から睦月もご一緒させて頂きますので、よろしくお願いします」


晴れやかな屋上。

爽やかな笑顔でペコリとお辞儀し丁寧な挨拶を口にした班乃の前には

予想外の出来事に戸惑いを見せる2人と

ピりついた空気感を醸し出す2人。

沈黙吹きすさぶ5人の間に、春の匂いを乗せた風が吹き抜けた。

顔を見合わせた植野と鈴橋2人共の目は “なにか知ってるか?” という問いかけが含まれたものだったが、勿論2人とも知る筈もなく同時に首をかしげる。

決して視線を合わせないようにしているかのような安積と市ノ瀬を交互に見た後、現状を理解しようと鈴橋が口を開いた。


「…お前ら、喧嘩してたんじゃなかったのか?」

「は?喧嘩? 何の事だよ、眼鏡」

「…………………」

「がっ、がっくん落ち着いて!えーと、俺は植野綾雪で、隣の子は眼鏡じゃなくて鈴橋学ねっ! 君は市ノ瀬、睦月君だっけ?」

「間違ってはないな」

「ぁはは…良かった。 クラス違うから昼くらいしか絡めないかもだけど、これから宜しくっ!」


無言で苛立つ鈴橋をいち早く察知し極めて明るく友好的に挨拶する植野を一瞥した市ノ瀬は、もう用は済んだとでも言いたげに視線をそらし無言で昼食に手を伸ばす。

が、安積が即座にその脇腹を小突いた。

いや、意外と豪快にド突いた。


「~ってぇな!なにすんだテメェっ!!」

「馬鹿かお前。ガキじゃないんだから挨拶くらいちゃんとしろよ馬鹿。ガキじゃないんだから」

『『『2個っ、2回言ったっ…!!』』』


「あ゛ぁ? 喧嘩売ってんのかお前!?」

「喧嘩? 人として当たり前の挨拶すら出来ないみたいだから教えてやってるだけだろ。いちいち噛みついてくんなよ。噛みつき亀かお前は」

「噛みっ…っ!だいたいそんなんお前に言われなくたって「あーそう。じゃぁ、はい。どうぞ?始めましてのご挨拶」

「ぐっ…!!」


見つめ合うその視線の中心には、目に見えないはずの火花が盛大に見えた気がした…座った目に鉄火面を張り付けた安積と、奥歯を噛み締めて言葉を失った市ノ瀬のどちらに軍杯が上がったのかは、誰の目にも明らかである。


「せっ…せーちゃんがいつになく強気なんだけどっ」

「なんか生き生きしてるようにも見えるな…」

「そうですね。仲良くなってくれて嬉しいです」

「「仲良く…」」
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