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- 15章 -
-憧れ 妬み-
しおりを挟む「そうだよ。俺は何も知らない。そもそも知ろうとも思ってなかったし。面倒くさいんだよ。友達なんて」
「…俺は面倒くさいなんて思った事なんてない」
「だろうな。でも俺はお前と違う。どうせ2年ちょいだけの付き合いなんだし、困らない程度に適当にやれればって思ってた」
「…寂しい奴だな」
「……」
1人は寂しい。楽しい事も、辛い事も、悲しい事も、幸せな事だって、1人で居たら感じられない。
だからこそ、友達や家族、大切な人が居て、初めて自分も成長できる。
一緒に色々な事を分かち合って、どんどん好きになっていくんだ。
それは凄く大切な事だと思う。
だから…
だから、そんなふうに思える人が居ない市ノ瀬は “ こう ” なんだ…
また怒り出すのではないかと思ったが、予想外に飲み干したカップを静かに眺め何かを考えていた市ノ瀬は、数回瞬きを繰り返した後口を開いた。
「別に、それが寂しい事なんて思ってない。 俺にとってはそれが普通だし。 だから…お前が明に対して一生懸命になる意味が分らない。 他人の為に怒れる気持ちなんて、もっと」
「…お前に、大切な人は居ないのか?」
「大切な人…ね。 特には居ないな」
「そう…。なんで友達を面倒くさいって思うんだよ?」
「馬鹿馬鹿しいんだよ。 友達って言葉に縛られるのが。 友達だからやりたくもない事にへらへら笑って付き合ったり、嫌われないように顔色伺ってあちこちに良い顔したり、1人で居るのが寂しくてとりあえず誰でも良いから誰かといる、みたいな…あと、優しくする自分に酔ってる奴とかな。そういう友達ごっこ、嫌いなんだよ」
誰かを思い出しているのだろうか。 話している市ノ瀬の顔は常に険しかった。やけに具体的なのはそういう人たちが側にいたということなのだろうか。
『…嫌な所しか知れなかったんだな。だからこいつはこうなんだ』
市ノ瀬のいう事に否定は出来ない。そういう人達だって居るというのは否定出来ないから…
たまたま、市ノ瀬が今まで過ごしてきた環境の中では “ そういう人 ” が多かったんだろう。それなら、“友達”というものそのものを嫌いになってもしょうがないのかもしれない。
でもそれは、きっと不運と呼べると思う。
「…俺は、寂しいよ」
「は?」
「お前の言ってるのが、友達だって思ってる事が寂しい。 そういう付き合いしか出来ない人達が寂しい。 友達と居る人達を見て、そんな付き合いなんだろうなって思ってしまう事が寂しい…」
「………」
「だから俺は、大事にするんだ。 上辺だけみたいな付き合いはしたくないから。 大切にしたいんだよ。 俺が、幸せで居たいから」
「それは、俺が寂しい奴だって言いたいのか?」
「…もったいない思う。 本当に大切に思える人が居るなら、もっともっと楽しい事があると思うんだ」
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