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- 15章 -
-憧れ 妬み-
しおりを挟む「俺の話はそれだけだからっ…で、お前の話ってなんなんだよ」
「あぁ……それな。…それは、あれだよ」
とりあえず喧嘩も回避出来たし、謝罪は出来た。今一釈然としない感じはあったけどまぁ、良いだろう。
それよりも、市ノ瀬の話というのが気になる。
転校初日に殴ってしまってから、まともに話をしたことがないのにも関わらずだ。
なんの話なのか、まったく予想がつかない。
自分の話の番になると、いつも自信満々に話す市ノ瀬には似つかわしくなく言葉を濁した。
「…お前、この間さぁ」
「うん」
「1人で…あれ、探してただろう」
「あれ?」
「だから…」
再び言葉を濁した市ノ瀬だったが、苛立たしげに手の中で弄んでいたココアを持ち上げ自棄糞気味に飲み干した。
『えっ、無理っ』
実は猫舌な安積がそんな事を思っていると、大きく息を吐き出した市ノ瀬がキッと安積を睨み付けた。
「指輪だよっ。 俺が投げ捨てた、あれっ」
「あぁ…って、えっ?なんで知ってんだよ」
「たまたまだよ。たまたま川の辺り通って…そしたら1人で川遊びしてる変な奴がいたから」
「遊んでねぇよ…まぁ、結局見つからなかったけど」
「だろうな」
そして再びの沈黙。
『…どの口がそんな事っ』
見つからないとのうのうと言い放つその態度が癇に障る。我慢我慢と言い聞かせ、気づかれないよう机の下で両手をぎゅっと握った。
「…で、それがなんだよ。 別に俺がなにしようとお前には関係ないと思うけど」
「そうだな。 関係ない。 ただ…気になっただけ」
「あ、そう。… 話はそれだけ?」
このまま話を続けてたらまたイライラが募りそうで、出来れは直ぐにでも帰って欲しい衝動に駆られて、話を終わらそうとしたのだが…
「…なんで、他人の為にそんな事出来るんだよ。 普通に考えて川に投げ捨てた物が見つかるわけないだろ。 明だって気にするなって言ってたし」
「………」
いつの間にか市ノ瀬までもが班乃を名前で呼んでいる事に気がつき、心の中に理由の分からないモヤが急激に広がっていく。
『…明を名前で呼んでたのは俺だけだったのに』
しかし今はそんな事よりも話をしないとと、意識的にモヤから目を反らした。
「…見つかるわけないなんて、探してみないと分んないじゃん。 確かに気にするなって言ったけど、あれをどれ程大切にしてたか、明がどんな人なのか知ってれば、それが強がりで言ってる事くらい分るよ。 …お前には分らないだろうけど」
お前はなにも分からない。
その自身の発言が、求めていたわけではないのに目を反らしたモヤの答えを導いてきた。
自分は市ノ瀬に嫉妬してる。
明を独占したいって思ってる。
彼を理解しているのは自分だけで
明の特別は俺だけだって…
俺だけで居て欲しかったと。
このモヤモヤの原因は、きっとそれだ。
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