291 / 1,142
- 15章 -
-憧れ 妬み-
しおりを挟む「俺の話はそれだけだからっ…で、お前の話ってなんなんだよ」
「あぁ……それな。…それは、あれだよ」
とりあえず喧嘩も回避出来たし、謝罪は出来た。今一釈然としない感じはあったけどまぁ、良いだろう。
それよりも、市ノ瀬の話というのが気になる。
転校初日に殴ってしまってから、まともに話をしたことがないのにも関わらずだ。
なんの話なのか、まったく予想がつかない。
自分の話の番になると、いつも自信満々に話す市ノ瀬には似つかわしくなく言葉を濁した。
「…お前、この間さぁ」
「うん」
「1人で…あれ、探してただろう」
「あれ?」
「だから…」
再び言葉を濁した市ノ瀬だったが、苛立たしげに手の中で弄んでいたココアを持ち上げ自棄糞気味に飲み干した。
『えっ、無理っ』
実は猫舌な安積がそんな事を思っていると、大きく息を吐き出した市ノ瀬がキッと安積を睨み付けた。
「指輪だよっ。 俺が投げ捨てた、あれっ」
「あぁ…って、えっ?なんで知ってんだよ」
「たまたまだよ。たまたま川の辺り通って…そしたら1人で川遊びしてる変な奴がいたから」
「遊んでねぇよ…まぁ、結局見つからなかったけど」
「だろうな」
そして再びの沈黙。
『…どの口がそんな事っ』
見つからないとのうのうと言い放つその態度が癇に障る。我慢我慢と言い聞かせ、気づかれないよう机の下で両手をぎゅっと握った。
「…で、それがなんだよ。 別に俺がなにしようとお前には関係ないと思うけど」
「そうだな。 関係ない。 ただ…気になっただけ」
「あ、そう。… 話はそれだけ?」
このまま話を続けてたらまたイライラが募りそうで、出来れは直ぐにでも帰って欲しい衝動に駆られて、話を終わらそうとしたのだが…
「…なんで、他人の為にそんな事出来るんだよ。 普通に考えて川に投げ捨てた物が見つかるわけないだろ。 明だって気にするなって言ってたし」
「………」
いつの間にか市ノ瀬までもが班乃を名前で呼んでいる事に気がつき、心の中に理由の分からないモヤが急激に広がっていく。
『…明を名前で呼んでたのは俺だけだったのに』
しかし今はそんな事よりも話をしないとと、意識的にモヤから目を反らした。
「…見つかるわけないなんて、探してみないと分んないじゃん。 確かに気にするなって言ったけど、あれをどれ程大切にしてたか、明がどんな人なのか知ってれば、それが強がりで言ってる事くらい分るよ。 …お前には分らないだろうけど」
お前はなにも分からない。
その自身の発言が、求めていたわけではないのに目を反らしたモヤの答えを導いてきた。
自分は市ノ瀬に嫉妬してる。
明を独占したいって思ってる。
彼を理解しているのは自分だけで
明の特別は俺だけだって…
俺だけで居て欲しかったと。
このモヤモヤの原因は、きっとそれだ。
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
私の事を調べないで!
さつき
BL
生徒会の副会長としての姿と
桜華の白龍としての姿をもつ
咲夜 バレないように過ごすが
転校生が来てから騒がしくなり
みんなが私の事を調べだして…
表紙イラストは みそかさんの「みそかのメーカー2」で作成してお借りしています↓
https://picrew.me/image_maker/625951

初恋はおしまい
佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。
高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。
※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。
今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。

チャラ男会計目指しました
岬ゆづ
BL
編入試験の時に出会った、あの人のタイプの人になれるように…………
――――――それを目指して1年3ヶ月
英華学園に高等部から編入した齋木 葵《サイキ アオイ 》は念願のチャラ男会計になれた
意中の相手に好きになってもらうためにチャラ男会計を目指した素は真面目で素直な主人公が王道学園でがんばる話です。
※この小説はBL小説です。
苦手な方は見ないようにお願いします。
※コメントでの誹謗中傷はお控えください。
初執筆初投稿のため、至らない点が多いと思いますが、よろしくお願いします。
他サイトにも掲載しています。


BlueRose
雨衣
BL
学園の人気者が集まる生徒会
しかし、その会計である直紘は前髪が長くメガネをかけており、あまり目立つとは言えない容姿をしていた。
その直紘には色々なウワサがあり…?
アンチ王道気味です。
加筆&修正しました。
話思いついたら追加します。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる