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- 15章 -
-憧れ 妬み-
しおりを挟む内心悪態をつき考えるのも面倒臭くなった安積は、自分と同じもので良いやと2人分のココアを作ってリビングに戻る。
本来2人がけのソファーはど真ん中を占領されており、下手な衝突を起こさないよう大人しく座布団を引いて向かい合うようにして床に座った。
「で? 話ってなに」
「…お前から先話せ」
「…は? 誘ってきたのお前じゃん」
「だから?関係ねぇだろそんなの」
「…………」
『あぁ゛ーーもうっ!!』
どこまでも俺様だなこいつはっ!!
苛立ちを覚えた気持ちを落ち着かせるようにココアを1口飲み糖分を補給すると、小さく息を吐いた。
「俺の、話は…」
「……」
「お前に…謝らないとって、思って」
「……はぁ?」
少し間を空け返された声には、呆れや意味が分からないと言ったようなニュアンスが感じ取れた気がした。恐る恐る市ノ瀬を見ると、珍獣でも見るような目を向けられている。
なにに対して謝っているのか感じ取ってくれたら嬉しかったのだが、説明しないと駄目そうだ…
「だから、その……殴った事。 お前のやった事は絶対に許せないけど、だからって手を出すのは悪かったと思って」
「………」
「だから…ごめん」
無反応。
気合を入れて謝ったのに、上から来る無言の視線が痛い…
『早くなんか反応しろよっ!!』
耐え切れず、チラッと市ノ瀬へと視線をむけると、なにやら感慨深い面持ちでこちらを見ていた。
「……なんだよ?」
「お前、変な奴だな」
「…えっ」
「謝らないだろ、 普通に考えて。怒らせるような事したのこっちなんだし」
「………」
「…………」
「はぁ!? 」
「うるせぇなっ」
わざとらしく耳をふさいで顔をしかめる市ノ瀬だったが、そんなこと今は構っていられない。思わず机の上に身を乗り出すと、鬱陶しそうに手をはためかせられる。
「おまっ、怒らせるってっ、自覚あってあんな事やったのかよっ!?」
「別に自覚あってやったわけじゃねぇよ。…いや、少しはあったかも」
「余計たち悪いよっ!!」
「良いだろ別に」
「良くねぇよ!?」
「とりあえず、あれだ。殴られてイラっとは来たけど」
「……」
「殴り返さなかっただろ。自覚、あったからな」
「…でもっ」
「なんだよ。不満でもあんのか?」
「っ……いや、別に」
「だから、謝られる筋合いもないし、謝れとも思ってねぇよ」
意味が分らない…
元々分かっていたわけではないけれど、余計にもっと市ノ瀬の事が分らなくなってしまった。
俺様で我侭かと思えば、意外と冷静な面あって。
言っている筋も通ってる。
『なら、なんであんな行動をとるんだよっ』
「…ぁ、子供だからか」
「あ? 誰が?」
「いや、なんでもない…」
「なに?喧嘩売ってんの?」
「売ってないっ!」
子供だからという事が府に落ちてしまいうっかり声に出してしまったが、折角謝罪する事が出来たのだ。ここでまた喧嘩になるのは避けたい。
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