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慰弦

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- 15章 -

-憧れ 妬み-

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「ちょっと話がある」

「…誰に?」

「お前以外の誰に話しかけてると思ってんだ」


今日の夕飯どうしようかな

レンタルショップでも行って、何か面白そうな映画でも借りようか…

それよりも台本覚えるのが先か


部活も終わりそんな事を考えていると背後から急に話かけられ、その声のした方を見上げると、そこには自分を無表情に見下ろしている市ノ瀬がいた。

『こいつが俺に話ってなんだよ…でも』

思いも寄らない誘いに戸惑い答えに詰まっている間にも、市ノ瀬の眉間にはシワが寄っていく。

『…でも、頑張るって決めたしっ、この間の事を謝るチャンスじゃんっ』

気合を入れるように膝の上で拳を強く握り、市ノ瀬の堪忍袋が壊れる前に立ち上がった。怒っているととられないよう笑顔を作ってみるが…

引きつっているのは自分でも分かる…。


「良いよ。 俺も丁度話したいことがあったし…どこで話そうか?」

「取り合えず座れる所」

「………」


そんなの、沢山ありすぎて困る。

公園…は人通りが多過ぎる。

ファミレスは…ココの学生も結構来るから出来れば避けたい。

なるべく落ち着いて話が出来る所が良い。


「市ノ瀬は帰り電車?」

「いや、バス」

「そう…じゃぁ」


ホームグラウンドで戦わせてもらおうじゃないか。

…別に戦うわけではないが、安積にとって市ノ瀬と話をするというのは、それに近い意気込みが必要だった。


「…家で良い?」

「家…遠いのは嫌なんだけど」

「15分くらいだよ。別にそんな遠くないだろ?」

「方向は? 逆方面とかだったら萎える」

「…… 駅の方」

「そ。なら良い。お前ん家で」


『相変わらず偉そうな奴だっ』

苛立ちを覚られないよう直ぐ様背を向け自宅へ歩みを進めるが、道中で話す気はないらしく無言のまま斜め後ろを維持している。

なんの話なのか考える余裕はなくピリピリした空気をどうにか耐えきるが、勿論これで終わりではない。

本番はこれからだ。

「適当に座ってて。 何か飲み物でも持ってくるから」


その声に応えることなくまるで我が家とでもうようにリビングへと入った市ノ瀬は、遠慮もなく深くソファーに腰掛けた。

『…ある意味尊敬だな、この図々し……物怖じしないところっ。まぁ良いけどねっ!…飲み物なににしよう』

市ノ瀬がなにを好むかなんて分からない。分かったところであるものしか出せないけれど。冷蔵庫を覗くと、水と、牛乳と、いちご牛乳と…そしてもう1つ。それを手に取り持ち上げてみた。


『なんでこんな……あっ、そか。ひじりが前に来たとき置いてったんだっけ』


真新しい焼酎のボトルを眺めながら、ひとまずそれをしまう。流石に酒を出すわけにはいかない。

いちご牛乳もだ。

『…バカにされそうだし』

とすると、あとは…


「なぁ、紅茶とココアだったらどっちが良い?」


ソファーに腰掛け携帯をいじっている市ノ瀬に台所から声をかけると、やる気のない声で“どっちでも”と短い返って来た。

『ったく…酒もるぞコラっ』
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