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- 15章 -
-君と僕と君と-
しおりを挟む『なんなんだよ…もう』
見上げた天井は染み一つなく、トイレ特有の匂いもない。
さすが私立だけあって清掃も行き届いているようだ。
前に公園のトイレで薬を使って、匂いである意味しにかけた事を思い出して1人苦笑する。
『イライラすんの良くない。 ってか、俺が腹を立てる意味なんてなくね? 皆で仲良くすればいいんだし…指輪の事だって明本人がなんとも思ってないって言ってんならそれで良いじゃん』
あまりの気だるさで便器に座ったまま動けないで居ると、HR開始のチャイムが鳴り響く。
『あー…これって遅刻扱い? ま、いっか。 とりあえずHR終わるまでココに居よ。 …というか、冷静に考えたら俺って市ノ瀬に謝らなきゃいけないんだよな…いくら腹立ったからって殴るとかないわぁー。 明にだって迷惑かけたわけだし、ココで俺が、市ノ瀬嫌いだから一緒に居たくないーなんて言ったら、それこそ子供じゃないんだしってー』
1人悶々と考えていると誰も居ないはずのトイレのドアが叩かれ、“はっ、入ってます!!”と、驚きのまま反射的に答えると、ドアの向こうで小さく噴出した声が聞こえた。
普通に考えてトイレに入りたいなら他の個室に行けば良いわけで、わざわざ自分の入ってる個室のドアのノックする意味はない。
となれば…
「えーと…誰?」
自分に用事がある人に決まっている。
「僕ですよ。 大丈夫ですか?その、発作は」
「あ…あぁ、うん。大丈夫。迷惑かけてごめん」
班乃の声を聞くとなぜか安心する。 それはきっと、唯一自分の喘息の事を知っているからで…きっと、それだけだ。
「…なにか、あったんですか? 朝からあまり元気がなかったようですし。 えっと…睦月となにかありました?」
心配そうに自分に話しかける声を聞きながらドアを開けようと静かに鍵へと手をかけたが、開ける寸前で止まった。
「あの、さ…」
「なんです?」
「怒ってる?」
「…はい?」
先ほどトイレに駆け込む時、感情に任せて心配してくれた班乃の手を払いのけてしまった事を思い出した。
「すいません、何に対して言っているのか分らないんですけど」
「だからさ…その、さっき俺思いっ切りあっきーの手、払いのけちゃったじゃん」
「あぁ、その事は怒っては居ませんが…もしなにか怒らせるような事をしてしまったなら、謝らなければと思って…」
なにかあったのか?とは、問いかけることは出来なかった。恐らくだけれど、思い当たった安積が怒った理由が正しければ、きっと口にすることは出来ないだろうから。
安積がトイレへと走りこんだ後、不審そうにしている市ノ瀬を誤魔化し追ってトイレへと来たのだが、話しかける直前に違和感を感じ1度その違和感に頭を巡らせてみると、それは直ぐに思いあたった。
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