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- 15章 -
-君の為に-
しおりを挟む目つきは悪い。
が、整った顔ではある。
荒れの見えない肌と唇、綺麗に整えられた眉。
身長も…自分より少し低いくらいだろうか。
セットしているのか癖毛なのかは分らないが、髪型にも気を使っているようだ。
市ノ瀬が通すがる時、鼻腔を掠める香りはきっとコロンかなにかをつけている為だろう。
モデルを目指していると言うだけはあって、こうして改めて見ると外見には気を配っているようだ。
それに…
「なに?喧嘩売ってんの?」
「えっ? あ、あぁ、すいません、注視してしまって。そういうつもりではなく、ただ…」
「あ?」
「スタイル良いなぁ、と思いまして」
「……はぁ?」
それだけ言うと、再び背を向け歩みを進める。
性格に難ありだが、“見せる外見”としてはとてもありがたい存在だ。
正直、今の演劇部にはお世辞にも“良い顔”と言える人材は少ない。
『なんて事考えてるなんてしれたら殺されますね』
1人苦笑し、そうこうしているうちに目的地である視聴覚室に到着した。が、入る前に一度市ノ瀬へと向き直った。
「…どうかしたんですか?」
振り向いた先、少し離れた所で立ち止まっている市ノ瀬に声をかける。斜め下をむき、眉間にはシワが寄せられている。
また、なにか気に障ることでも言ってしまっただろうか?ざわつく心を誤魔化しながら市ノ瀬の返答を待つが、なかなか口を開かない。
「……あの?」
「毎日、鍛えてるから」
「…え?」
「だから、筋トレとか食事調整とかも」
「あぁ、成る程。体型維持の秘訣ですね。毎日努力されてるなんて、さすがです」
だいぶ間が空いていた為、先ほど自分が言った事に対しての返事だと理解するのに暫く時間がかかった。
今市ノ瀬が言った言葉が嘘ではないのは見れば分かる。体型は嘘はつけない。適当な事を言っているようにも感じられたが、夢に向かって真剣に考え行動しているのは本当のようだ。
『難しい子ですね…』
言動と行動が伴っていないような、伴っているような、市ノ瀬を理解するには時間がかかりそうだ。
「……くない」
「はい? なんですか?」
駄目だ。最近自分1人の世界に入り込んでしまうことが多くなってきている気がする。気をつけないとと完全に聞き逃した市ノ瀬の言葉に反省していると、思いもよらない言葉が返される。
「お前も、悪くはない」
「………僕、ですか?」
自分のなにが悪くないというのだろうか?
少し前までしていた会話を思い返すと、疑惑はあれど1つの結論に思い当たった。
それはー…
『僕の事、褒めてくれた…んですよね?』
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