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- 15章 -
- 転校生 -
しおりを挟む安積が屋上へ到着する頃には既に鈴橋も植野も到着しており、並んで会話を楽しんでいたようだった。しかし2人とも昼食には手をつけず待っていてくれたようで、遅れた事を謝ってから食事を始めた。
「ねぇ、せーちゃん。なにかあった?」
「え?」
それはいつも通りの昼食、と思っていたのは安積だけだったようで、不意にかけられた植野の言葉にはじかれたように顔を上げる。
「えと、なにが?」
「なにがって…無自覚?さっきから全然喋らないし、なんか考え込んでるみたいだったし」
「そう、だった?」
「うん」
そうだっただろうか…いや、確かに先ほどの事が頭から離れず、うっかり無口になってしまっていた可能性は大いにあり得る。
「大丈夫?なにかあったなら聞くよ?」
「……なに、か」
でも…何を言えばいいのだろう。 ってか、なんて言えば良いんだろう?
黙り込んでしまった姿を見て、植野と鈴橋は顔を見合わせた。
「なに遠慮してんだ。何か言いたいことがあるならハッキリ言えよ」
『群れなきゃなにも出来ない女子かよ。きも。無理だわそう言うやつ。言いたいことあるならハッキリ言えよ』
鈴橋の言葉に市ノ瀬の言葉が重なり蘇る。けれど、同じ言葉なのに鈴橋の言葉はもっと…
「全然違うっ」
「は?」
市ノ瀬と同じように鈴橋も言葉が綺麗とは言えないし笑顔も殆どないが、鈴橋の言葉の中には “ 心配 ” という、暖かさが含まれている。
「がっくん…」
「なんだよ」
「…好き」
「は?」
「それは駄目っ!!」
「っ!」
「え?」
「っと!…なっ、なんでもないっ!」
「…うっ、うん?」
凄い剣幕で鈴橋に睨まれバツが悪そうに曖昧な笑みを浮かべている植野を前にし、この2人の間になにがあったのかは分からずとも、何故だか先ほどのまでのイライラが収まってきたような気がした。
『…そうだよ。皆仲良くが理想だったじゃん!』
それなのに自分がこんなでは駄目だと大きく息を吸い込み、ぱしんっとすべてを吹き飛ばすような大きい音を立てて手を合わせた。
「なんか心配かけたみたいでごめんっ!なんでもないよっ、大丈夫っ!」
「…そう?」
「迷惑かけてごめんねっ!」
「別に迷惑なんて思ってない。うじうじ悩んだって良いことないぞ。嫌なことはさっさと吐き出す事だな」
「そうそう!話ならいつでも聞くし、せーちゃんには元気でいて欲しいし、ねっ、がっくんっ!」
「……まぁ、落ち込んでるよりは」
「もうっ、素直じゃないんだからっw」
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