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- 15章 -
- 転校生 -
しおりを挟む今まで他人に嫌われた事などないに等しい安積にとって、自身に向けられた初めてと言って良い程の嫌悪感を隠さない視線に恐怖を覚えるのはしょうがない事だろう。
「ー…えっと、じゃぁそろそろ移動するけどいいかなっ!?」
その視線から逃れたい一心で急ぎ市ノ瀬から顔をそらし後ろの生徒達へと声をかけた。
隣のクラスにまで轟いた転校初日の珍発言が幸いし、違うクラスだった生徒達とも既に打ち解けられていたおかげか、問いかける安積へ多くの心良い返事と笑顔が返される。
誰かの “ いいともー!” の声に古い古いと笑いがおき、そんなクラスメイト達の反応に気が抜けたように全身から力が抜けた。
ホッとした、という表現が正しいだろうか。
鈴橋や班乃には若干不評で悲しく思ったりもした発言だったが、やはり言って良かったと心の底から実感した瞬間だった。
そのまま意識的に市ノ瀬と目を合わせないように前を向き体育館へと移動を始め、それから30分。
班乃はクラスメイトの期待通りの挨拶を無事やり遂げ、学園長、クラスごとの担任の挨拶を欠伸をかみ殺しながら何とか聞き終えた時には10:30となっていた。
挨拶を終えた班乃も列に加わり教室へと戻ってきた生徒達は、帰りのHRが終わるのを退屈そうに過ごし漸く自由な時間が訪れる。
今日は新しい台本が配られる予定であり、それに目を通した後に投票や希望を聞いて配役を決めていく。
これから数ヶ月かけて練習していくための第1歩が今日であり、そしてその日が安積は大好きだった。
はやる気持ちを抑える事無く片手に昼食を引っ掛けて勢い良く立ち上がり、定番になっている屋上へと行くために声を上げた。
「あっきー! 早く屋じょ」
「ちょい委員長ー!」
「あ、はい?」
安積の言葉にかぶるようにして担任が声を上げると、班乃は安積へと軽く笑いかけてから担任の下へと向かった。
その後姿を目で追うと、安積にとってあまり嬉しくない姿が飛び込んでくる。
班乃を呼んだ担任の後ろに立っていたのは、あの市ノ瀬だった。
『お昼、一緒するんだし…不自然じゃないよね…』
そう自分に言い聞かせると、班乃の傍へと近寄り隣で止まる。
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