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慰弦

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- 15章 -

- 転校生 -

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「…会長?」


無表情でそれだけ言えば、班乃の返答を待っているのか真っ直ぐと目を合わせてくる。特に意識することなくいつも通りの笑顔を向けると、心なしか市ノ瀬の眉間にシワが寄った気がした。


「少し変わってるんですよ、この学校の生徒会制度。卒業する生徒会長が在校生の中から次期会長を選ぶんです。 なので1学年でも会長になる事もあるんですよ」

「ふーん。変な学校」

「ですよね、僕も驚きました」

「僕?」

「えっ?」

「…ふーん。生徒会長で、学級委員長で、同級生にも敬語で、僕ときたか。いかにもな優等生だな。嫌いなタイプだ」


自分に素直すぎるのか、言葉を選ばないその姿に良い印象は感じられない。すべての人に好かれるとは思ってはないし、嫌いだと言うのならそれはそれで構わないのだが…

『…これは、人波乱起きそうですね』

その予感は的中し、一瞬にしてピリピリとした空気が周囲に漂った。


「なにお前。 喧嘩売ってんの?」


市ノ瀬の言葉に反応を示し1歩乗り出したのは先ほどまで話をしていたクラスメイトだった。庇ってくれるのはありがたいが問題を起こすのは止めていただきたい。

彼の腕を軽く掴んで制止すると静かに立ち上がった。


「すいません。もう癖なんですよね、敬語。なおらなくて。さて、そろそろ並ばないと遅れてしまいます。移動しましょう?」


今にも始まりそうな喧嘩を笑顔で宥め止めると、市ノ瀬と引き剥がすようにクラスメイトの背中を押して廊下へと出た。

道中小さくお礼をのべると、申し訳なさそうに頷き返され逆に申し訳なくなる。

その背中を無表情で眺める市ノ瀬だったがそれ以上は突っかかる事はなく、少し遅れて廊下へと足を向けた。


「おっ、セーフセーフ!間に合ったっ!」

「お帰りなさい安積。僕は準備があるので先に行きますね」

「おっけー!」

「あぁ、あと市ノ瀬君に並び順伝えられてないので、お願い出来ますか?」

「…りょっ!任せてっ!!」


タイミング良くお手洗いから帰ってきた安積の肩をすれ違いざまに叩き後の事を託すと、班乃は1足先に体育館へと向かう。

並び順的にも市ノ瀬の反応的にも、ここは自分よりも安積に託した方が良いだろうとの判断だったが、返答までに開いた間が安積の心情を物語っていた。

『怖いって、言ってましたもんね…』

なんだか擦り付けてしまったようで罪悪感が募るが、もどかしく思えど時間がなく自身で対応出来なかったのも事実である。

もしなにかあったらきちんと謝罪とフォローを入れようと考えながら、なにもない事を願うしか出来ない班乃だった。
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