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慰弦

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- 15章 -

- 転校生 -

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HRが終われば10分休憩を挟み始業式が始まり、授業がない今日はその後部活動となる。

今はHRが丁度終わったところ。

担任が教室から出て行くと、直ぐに何人かは市ノ瀬睦月いちのせむつきの元へと集まった。

各々が自己紹介をしているが市ノ瀬はその様子を笑顔も見せずにただただ聞いているだけだった。

が…


「なぁ、何処から来たの?」

「兄弟は?」

「部活はどうするの?」


時折笑顔を見せて話している事もありなんとなく耳をすませてみれば、それはどうやら自分に対する質問に対してのようだった。

自己紹介の時には冷たい印象があったが、本当はそうでもないのかもしれない。きっと今は慣れない環境で他人に感心を向ける余裕がないのだろ。

そんな様子を横目で見ながら通り過ぎ、安積は班乃の元へと向かった。


「どう? 完璧?」

「完璧ですね」

「さすがあっきー!」


班乃は手元に持っていた紙を折りたたんで机へと入れた。

生徒会長の仕事の一つ、考えた始業式の挨拶は既に頭の中に入っている。

元々大勢の前に立つ事に緊張をした事はなかったので、挨拶中に内容が飛ぶことはないだろう。


「それより…」

「ん?」

「貴方なら直ぐに転校生に声をかけに行くと思ってましたけど」

「ぁー…まぁ、ちょっとね。今は皆が絡みに行ってるから、追々行こうかなと」


そう答えた顔は余り晴れた顔ではなかった。どこか近寄ることに関して苦手意識を持っているような…


「もしかして、余り得意ではない感じなんですか?」

「えっ!? いや、そんな事はないけど、ちょっと怖いかなぁって」

「怖い?」

「…なんでかは分かんないんだけどね。 それよりそろそろ並ぶ時間だし、その前にちょっとトイレ行ってくる!」

「えぇ」


元気良く教室から出ていくその後姿を見送ると、最後にもう1度確認をしておこうと挨拶内容が書かれた紙を取り出し本番に備える。


「あ、会長!どうですか? 挨拶は」

「え?あぁ、大丈夫ですよ。 当たり障りのない内容なので聞いても面白いものではないと思いますが」

「やー、去年の挨拶では笑わせて戴きましたよw」

「あの後謝りに行きましたけどね。一応」


前回の終業式の時は担任の輝かしい頭と生徒達の輝かしい未来を絡めた話をし、生徒達の反応はかなり良かったがネタにされた担任には多少怒られたのだった。

気の置けない担任なので、本気で怒られたわけではないが。


クラスメイトとそんな話をしていると、ふいに隣に誰かが立ち止まった。なんだろうかと顔を上げれば、そこに居たのは市ノ瀬であった。
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