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- 15章 -
- 転校生 -
しおりを挟む「えー、これから2年生という一番気持ちの緩む学年が始まるわけですが、1年なんてあっという間です。油断していると直ぐに3年、受験、就職が迫っている状態になりかねんので、油断はせずに張っていきましょう」
初めてのHRが始まり、新しい担任の挨拶が始まる。きちんと話を聞いている者、外をぼっと眺めている者、ひそひそ話しをしている者など、それぞれがそれぞれのスタイルで、担任の挨拶を聞いていた。
…一応。
担任はそんな様子をゆっくり10秒ほど眺めてから、教団に片手を置いて寄りかかった。
「さて、つまらない挨拶はこれくらいにして、皆もクラス分けを見て知っているだろうが、このクラスに今日から転校生が来ます」
その言葉に、待ってましたとでも言うように全員の視線が担任へと集まる。そんな現金な態度にもなんの反応も返さずな態度で返すこの担任はなかなかの兵だろう。
「親御さんのご都合でこちらに越してきてまだ日も浅いので、皆仲良くするように」
その言葉に返事はないが、生徒達の輝いている目を見れば心配はなさそうだ。1人小さくうなずくとドアの前へと移動し、開け放った扉から入ってきたのは今紹介のあった転校生。
クラス分けで最後にあった名前“市ノ瀬睦月”であった。
物怖じするでもなくスタスタと教団の前へと移動すると黒板に書かれた自分の名前を一瞥し、クラスメイトへと目を向ける。
「名前は黒板に書いてある通り。とりあえず宜しく」
笑顔の1つもなく一気に喋ると、生徒達もその姿に呆気にとられたように無言になった。
「で。 俺は何処に座れば良いんですか?」
教室に来る前に1度会っているので何となくこんな感じになりそうな事を予想していた担任は、これまた動じずに開いている席を指差し、その指先を目で追った市ノ瀬は何も言わず堂々と席まで移動してごく普通に座った。
まるで前からその席が自分の席だったとでもいうように。
その動きを目で追っていた生徒達の目線に目線で返すと、何人かは気まずそうに目をそらし、何人かはなぜか笑顔で返してきた。
安積の時のような盛り上がりは一切なく、無言が続く教室で終始冷静だった担任は人知れず溜息をつく。
『安積の時とはまた違う大変さがありそうだな…』
実はこの担任、1学年での安積達の担任であり今では懐かしい当時の事が頭が過る。突拍子もない発言で周囲を驚かせた彼は、人懐っこさもあってクラスメイトのみならず同級生達と直ぐに打ち解けて行ったのだが、果たして市ノ瀬は…
なにもないと良いと、1人密かに祈るのだった。
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